若手社員の「理想の上司」とはどんなものか。金沢大学の金間大介教授は「複数のアンケート調査によると、『自分の意見や考えに耳を傾けてくれる』や『仕事について丁寧な指導をする』といったことが上司に求められいる。逆に『仕事の成果にこだわる』や『仕事を任せて見守る』といったことは期待されていない」という――。(第3回)

※本稿は、金間大介『静かに退職する若者たち』(PHP)の一部を再編集したものです。

オフィスのミーティングテーブルで資料を並べて見ながら相談するスーツ男性2人
写真=iStock.com/chachamal
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若手社員は上司にどんなことを求めているのか

本稿では、「部下が上司に期待していること」をテーマにする。このテーマについては、多くの調査会社がデータを取得、公表している。よって、本稿もデータリッチに進めてみよう。そこへ僕の解釈を乗せて展開していく。ぜひ読者の皆さんもいろいろな解釈を巡らせながら読み進めてほしい。

まずは、コロナ前のデータから。図表1は、エン・ジャパンが2019年に実施した上司と部下に関する意識調査の結果だ。

上司に期待していること
上司に期待していること(出所=金間大介『静かに退職する若者たち』)

同社が運用する「エン転職」というサービスを利用するユーザー11,000人強を対象としている。同調査の結果でよく話題になるのは、「芸能人で例える理想の上司」だ。所ジョージさんや天海祐希あまみゆうきさんらがよく上位に名を連ねる。同調査は毎年行われているので、その変遷を追うだけでも、時代ごとにどんな上司像が理想とされているかがわかる。

ただこの「芸能人で例える理想の上司」に関する分析は、やりつくされた感があるので(それをあえて金間目線でやってほしいという人も増えていて、それはそれでありがたいことだが)、ここでは別の角度から、「上司に期待していることは何ですか?」という質問を取り上げよう。

このデータは、年代ごとに区切って公表している点が興味深い。そこで年代ごとのポイント差が大きいところに矢印を置いた。

図の最上位、20代から40代以上を通して票が集まっているのが、「自分の意見や考えに耳を傾けてくれる」上司だ。特に20代の支持者が多い。興味深いのはここからで、20代で次に多いのが「具体的なアドバイスをくれる」上司となる。これは、30代では第4位、40代では第5位だ。

同様に「いつでも相談に乗ってくれる」、「業務に一緒に取り組んでくれる」が20代では人気で、上の世代と大きな差がついている。逆に「公平・公正に評価してくれる」、「仕事を任せてくれる」は40代で比較的順位が高い。