新卒ひとりあたりの採用コストは約93万円

それでは、なぜ今、若者の退職が問題になっているかというと、それはやはり長期的な少子化や、それに伴う若手の生産年齢人口の減少、さらにそれに伴う新卒対象の求人倍率の高止まり等の影響が大きいだろう。これらはすべて、若手人材の奪い合いや囲い込みにつながる。

1990年代に社会に出た団塊ジュニア世代はおよそ200万人/年。そのころに生まれた人たちは、ちょうど今20代となって社会に出始めていて、その数はおよそ120万人/年だ。つまり、一世代(約30年)の経過に伴って数は5分の3ほどになった。

基本的に今の日本社会では、若者の市場価値は上昇し続けている。「若さの価値」のインフレと言ってもいい。株式会社リクルートが行った調査によると、2019年度に実施された新卒採用(2020年卒採用)における1人当たりの平均採用コストは93.6万円とかなり高い。しかもこの数字は年々上昇している。

それでは、若手社員のうち、何割が今の職場や仕事をゆるいと感じているのか。まずは図表2をご覧いただきたい。

現在の職場を「ゆるい」と感じる割合
現在の職場を「ゆるい」と感じる割合(出所=金間大介『静かに退職する若者たち』)

同図表は、リクルートワークス研究所が2022年3月の2つの期間において、従業員1,000人以上の企業に在籍する大学卒・大学院卒の正規社員で、かつ新卒から入社して3年目までの人を対象に実施したアンケート調査結果だ。

若手の3割が職場を“ゆるい”と感じている

回答者数は第一時点で2985名、第二時点で2527名となっている。この調査からは、8.4%(あてはまる)、28.0%(どちらかと言えばあてはまる)を足した36.4%の若手社員が、現在の職場に「ゆるさ」を感じていることがわかる。全体のちょうど3分の1程度と考えれば、イメージしやすいかもしれない。

問題は、このうちどのくらいが今の職場を辞めたいと感じているかだ。再三の繰り返しで恐縮だが、今の若者たちは、「自ら『ゆるい』と感じられるほどの神職場を手放すなんてもったいない、仕事はお金が貰えれば何でもいい、楽なら楽なだけいい、仕事でストレスはためたくない、仕事に生きがいは一切求めない」と思っていてもおかしくない。

実際(誠に遺憾ながら)こういったタイプはキャンパス内に大量に生息している。楽タン(楽に単位が取れる授業)、ゆるゼミ(交流がメインのゼミ)を提供している教授こそ神であり、逆に少しでも熱血授業をすると「圧がすごい」と言われる。また、同じことを淡々と続けるのが好き、ルーチンワーク大歓迎、という人も同様だ(回っている洗濯機をいつまでも見ていられる、という人に多い傾向があります)。

もしそんな彼らを捕獲ほかくしたければ、キャンパスにいくらでもいるので、いつでもご連絡いただきたい。