子供から「なぜ日本や世界の歴史を学ぶ必要があるのか」と問われたら、どう答えればいいのか。歴史評論家の香原斗志さんは「役に立つからだ。人間という生き物を理解する上でも、海外の人とコミュニケーションを深める際にも不可欠な科目だ」という――。
教室の机
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「歴史なんか勉強しても役に立たない」は間違い

中学生や高校生のころ、「歴史なんか勉強しても役に立たない」という声を聞いて、残念に思ったことが何度もありました。もちろん、その後も。

私自身は、大学では歴史以外の学問を専攻するつもりはないと早々に決め、公言する偏屈な少年でした。それはそれで「歴史は役に立たない」という思い込みと同じくらい視野が狭かったと思います。しかし、「歴史は役に立つ」と少年時代に感じて以来、それが外れていたと思ったことは、これまでに一度もありません。むしろ、少年時代に想像したよりもはるかに、歴史は役に立つ。それが、これまで生きてきての結論です。

そして、それを子供たちに伝えることができれば、歴史を学ぼうという意欲も喚起されるのではないでしょうか。親が「歴史は役に立つ」と実感し、それを子供に伝えることができるなら、それに越したことはありません。

では、歴史はなんのために、どのように役立つのでしょうか。最初にいいたいのは、人間とはどんなときにどう考え、どう行動する動物なのか、については、歴史をとおして考えなければわからない、ということです。