藤原道長の次兄、道兼とはどんな人物だったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「長兄・道隆が父の後継に選ばれたことを憎み、弟の道長と共に政権奪取を狙った。道隆の死後、関白となるがわずか10日ばかりで死去した」という――。
京都御所の紫宸殿
写真=iStock.com/Takosan
※写真はイメージです

不仲だった次兄・道兼と道長の間に起きた変化

藤原兼家(段田安則)の三男(正妻の子としては次男)である道兼(玉置玲央)と、五男(正妻の子としては三男)の道長(柄本佑)。この2人は、NHK大河ドラマ「光る君」の放送が開始された当初から、仲が悪い兄弟として描かれた。兄の道兼が弟の道長を虐待していた、といったほうが正確かもしれない。

ところが、このところ2人の関係に変化がみられる。そのきっかけは、第14回「星落ちてなお」(4月7日放送)で描写された。父の兼家が自分の後継者として、長男の道隆(井浦新)を指名したとき、道兼は「父上は正気を失っておられる。父上の今日あるは、私の働きがあってこそ」と、怒りをあらわにした。そして父の死後は、自暴自棄になって酒におぼれた。

第15回「おごれる者たち」(4月14日放送)では、そんな状態の兼家のもとを道長が訪れた。そして、「まだこれからではありませぬか。兄上は変われます。変わって生き抜いてください。この道長がお支えいたします」と伝えた。

この流れは、第16回「華の影」で、より明確になった。都じゅうに疫病が蔓延している状況を放置してはならないと考える道長は、関白である兄の道隆に「兄上から帝にご奏上いただき、疾病の対策を陣の定めでおはかりください」と訴えるが、「そのつもりはない」と一蹴されてしまう。その直後、道長は道兼とすれ違う。

その際、道兼から「どうした、そんな顔をして」と尋ねられた道長は、「関白と話しても無駄なので、自分で悲田院を見て参ろうと思います」と返答する。これに対し、道兼は「やめておけ。都の様子ならオレが見てくる」「汚れ役はオレの役目だ」と告げ、自分が救護施設の悲田院に向かったのである。