なぜ藤原道長は平安時代の最高権力者になったのか。歴史評論家の香原斗志さんは「『寛和の変』が大きなきっかけだ。花山天皇の退位により、道長の父の兼家は政治の実権を握り、姉の詮子は天皇の母となり絶大な権力を得た」という――。
兼家「なぜ私が狸寝入りをしていたか」
藤原兼家の大がかりな陰謀劇が次第に見えてきた。NHK大河ドラマ「光る君へ」の話である。
花山天皇(本郷奏多)に対しては、即位したときから兼家(段田安則)が不満を抱いている様子が描かれたが、案の定、天皇は自分の叔父で唯一の外戚である藤原義懐(高橋光臣)を重用し、その義懐の横暴な振る舞いが目につくようになり、きな臭い空気が漂いはじめた。
第8回「招かれざる者」(2月25日放送)では兼家が倒れ、命が危ぶまれる事態になった。だが、生死のあいだをさまよっているはずが、突如、三男(正室が生んだ子としては次男)の道兼(玉置玲央)の前で目を見開いたのが不気味だった。
その後、道兼は父の兼家を毛嫌いする花山天皇に、自分の腕にできているひどいあざを見せ、父親の折檻によるものだと伝えて、天皇に取り入るのだった。
続く第9回「遠くの国」(3月3日放送)では、陰謀が想像を超えるスケールであることが明かされた。先帝である円融天皇(坂東巳之助)のもとに入内した娘の詮子(吉田羊)が、父はこのまま目を覚まさないものと思って見舞っていると、突如、兼家が目を見開くので、詮子はありったけの悲鳴を上げた。
そして、起き上がった兼家は、道隆(井浦新)、道兼、道長(柄本佑)の3人の息子と詮子の前で、倒れたのはほんとうだが、ある時期からは狸寝入りであったことを明かしたうえで、そのようなフリをしたねらいを語った。