中国・ロシアは漁を続けている
なお中国漁船は処理水放出後、中国が日本産水産物を全面禁輸した2023年の秋も大挙して太平洋に押し寄せて、秋刀魚を漁獲している。
中国と足並みを揃え、日本産海産物の禁輸に踏み切ったロシアの漁船も、福島第一原子力発電所の50km圏内で堂々と漁を続けている。もはや道理も何もあったものではない。
このような状況で、一体誰が野放図に広まった「予言」と不安煽動を止めるのか。
積極的に「反論」する必要がある
事実に基づかない流言や不安煽動の発信・拡散元、すなわち「風評加害者」らに対し、これに近しい対応を取ることが重要になってくる。それを「誰が行うか」も含め、具体的には以下に3つ提案する。
①政府や行政機関が正確な情報発信に留まらず、積極的に「反論」をしていく
まずは、政府や行政機関が積極的かつ毅然として直接「抗議」「反論」をしていくことが必要だ。
これまで、政府や行政は「言論弾圧」のリスクあるいはトラブル、民事介入だとの批判を過度に恐れ、誤情報に対する積極的な反論を行うことは稀だった。
『フェイクを見抜く 「危険」情報の読み解き方』(唐木英明&小島正美・共著 ウェッジ・2024年)によれば、2021年11月6日、TBSテレビ「報道特集」がネオニコチノイド系農薬の危険性を訴えた。
内容は人の発達障害の増加に影響があるかのようなことをほのめかす、事あるごとに農薬やワクチンに向けられてきた典型的な不安煽動だったという。
唐木と小島は、同書でこれを否定する様々な根拠を挙げて反論した一方、農薬の許認可やリスク評価に携わった農林水産省や厚生労働省、食品安全委員会など「国からの反論がまったくなかった」ことを批判する。
そのうえで、《せっかく国に代わって反論しているのに、肝心の国がだんまりでは援護なしと同じだ。(中略)国がもっと表舞台に出て、科学的な論争を通じて、国民に適確な情報を流すべきだろう。そのやりとりを見て、国民が是非を判断すればよい》と訴えた。
その通りだ。国などの行政が矢面に立たず、現場の当事者や個人の善意など属人的な献身と自己犠牲に依存したままでは、自ずと限界が来る。あらゆるデマは「声が大きい者、立場が強い者の言ったもの勝ち」、ナチスの宣伝省大臣ゲッベルスが言った「嘘も百回言えば真実となる」が示したように既成事実化されてしまうだけだ。