駅メロの企画が再び日の目を見たのは2013(平成25)年。サザンオールスターズが5年ぶりに活動を再開、8月に再び茅ヶ崎公園野球場で凱旋コンサートを開催し、桑田さんに市民栄誉賞が贈られた。
商工会議所は再び署名活動を始め、約1万人分を集め要望書をJRに提出。2014(平成26)年10月に実現した。東海道線の上り線でイントロ、下り線でサビの部分が流れている。
メロディはサザンオールスターズ自身が監修。「(1990年発表の)レコードバージョンではなく、ライブで原由子さんが弾くバージョンをベースにしています」と、実現に尽力した石井政輝さん。茅ヶ崎で高糖度のミニトマトを育てる農家の16代目だ。「桑田さんは自分のラジオ番組で茅ヶ崎についてよく語っている。『地元愛』は物凄く強いはずです」。
「あやかり商売」と「そっとしておいてあげたい」気持ち
JR茅ケ崎駅南口を出ると、商店街「サザン通り」があり、縁結びのチタン製のモニュメント「サザンC」がある海岸「サザンビーチちがさき」まで2kmほどのそぞろ歩きになる。
ここからは、サザンの曲に登場する烏帽子岩と江の島が臨め、サーファーも集う。途中には桑田さんが通った市立茅ヶ崎小学校があり、洋菓子店「エトアール」はサザンにあやかった名前のサブレなどを販売。桑田夫妻が結婚指輪を購入した時計店「時宝堂」では、二人の指輪のレプリカをペンダントにして販売、海岸のモニュメントにあやかったチタン製だという。
その先には「茶山(さざん)」という名の深蒸し茶を売る「茶商 小林園」。桑田夫妻に贈呈し、折り返し原由子さんからお礼のハガキが届いたという。向かいの「サザン神社」は商店街の協力で古い店舗を改装、結婚を報告するファンが詣でており、運営を支援する小林園では、楽器をあしらった、参拝記念のご朱印状まで制作した。
一般的に地方の商店街が寂れていくのはどの地域にもありがちな課題である。駅前やロードサイドに商業施設ができれば、個人商店は先細りの傾向がどうしても出てしまう。茅ヶ崎も同じであり、全国から訪ねてくるファンを目当てにサザンに「あやかりたい」気持ちは強いだろう。
一方で、デビュー前の桑田さんを知る人々には「あまり騒がず、そっとしておいてあげたい」という思いも強い。「いつでも気軽に帰ってきてもらえるようにしたいから。実は“あやかり商売”をするのは気が引けるんですよね」。そんな本音も漏れていた。
「茅ヶ崎FM」開局と、10年ぶり三度目の凱旋ライブ
サザンオールスターズのデビュー45周年の2023(令和5)年、多くのファンが待ち望んでいた茅ヶ崎での凱旋ライブが十年ぶりに実現した。
2000(平成12)年、2013(平成25)年に続く三回目、9月末から10月初めにかけて四日間にわたる公演の最終日、10月1日のオープニングで桑田さんが真っ先に言及したのは「茅ヶ崎FM、本日開局おめでとうございます」という祝辞だった。