笠置シヅ子は本当に1956年大晦日の紅白歌合戦で歌手活動を止めたのか。『笠置シヅ子 ブギウギ伝説』を書いた娯楽映画研究家の佐藤利明さんは「実は笠置のラストステージは舞台だった。ブギの女王と呼ばれた笠置は、1957年の年明けに歌手引退を宣言し、5月の引退公演では意外なジャンルの楽曲に挑戦した」という――。

「東京ブギウギ」発売の9年後、笠置は歌手を辞めることを決断

連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)がクライマックスを迎えた。笠置シヅ子をモデルにした「ブギの女王」福来スズ子(趣里)の前に、次世代の若手歌手・水城アユミ(吉柳咲良)が現れる。時は昭和31年(1956)、経済白書が「もはや戦後ではない」と記し、世の中がダイナミックに変化してきていた。

石原裕次郎がデビューし、エルビス・プレスリーが「ハートブレイク・ホテル」をリリースしたのもこの年。若者たちの音楽はロックンロールとなり、流行歌では美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの「三人娘」が溌剌はつらつさで人気を博していた。「ブギの女王」笠置シヅ子の時代が、ゆるやかに終わりを告げ始めていた。