80代では半数以上が「白質病変」
この現象は、運転脳の衰えと同義に考えていただいても構いません。
白質病変は加齢のほか、高血圧等の生活習慣病、喫煙、生活習慣の乱れなどによって生じる脳の毛細血管を中心とする脳虚血病変のことで、40代までは喫煙者以外ほとんど発生しませんが、50代くらいから増え始め、60代以降に急増し、80代では半数以上の人に認められます(当脳ドック施設でのデータ分析より)。
白質病変では、神経細胞が集まっている大脳皮質(灰白質)にダメージがないため、呂律が回らない、あるいは手足が動かないといった脳卒中でよく見られる明白な症状はありません。
ただし、広範囲にわたる白質病変は、脳梗塞の再発や血管性の認知症と高い関連性があります。
交通事故を引き起こしやすくなる
そして何より、安全運転を阻害するやっかいなファクターになることが、私たちの長年の研究により明らかになっています。
大脳白質には神経細胞が乏しい反面、毛細血管と神経線維が密集しているので、白質病変では毛細血管のダメージとともに神経線維網(脳神経ネットワーク)が破綻しています。
白質病変は、脳神経ネットワークの破綻をもたらし、情報伝達の障害をまねき、それが運転操作に影響して、交通事故を引き起こしやすくするのです。