認知症を予防するにはどうすればいいのか。高齢者専門医の和田秀樹さんは「一人暮らしは認知症予防の最高の方法だ。認知症になった人は生きるための防御反応が高まる」という――。

※本稿は、和田秀樹『「健康常識」という大嘘』(宝島社)の一部を再編集したものです。

桜を見つめる老婆
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2つの病院で認知症患者の進行状況が違った理由

認知症の進行は生活環境で大きく変わってきます。介護保険がまだ導入されていなかった1990年代、今では主要な抗認知症薬とされるアリセプトも認可されていなかった頃に、私は浴風会病院とは別に茨城県鹿嶋市の病院で月2回、認知症の診療を担当していたことがあります。鹿嶋市に行くようになって気づいたのが、浴風会病院にやってくる東京都杉並区の患者たちに比べて、鹿嶋市の患者の認知症の進行がかなり遅く、症状も目立たないということでした。

それがなぜなのか、最初はとても不思議でしたが、杉並区と鹿嶋市の高齢者が置かれている生活環境を見比べるうちに、おおよその見当がついてきました。

杉並区の高齢者たちは認知症になるとその多くが家に閉じ込められていたのに対し、鹿嶋市では気ままに近所を歩き回らせることが多かったのです。

このことから、少なくとも認知症がそれほど進んでいない段階では、本人が希望すれば可能な限り外出させてあげるほうがいいのだろうと考えられます。外でいろんな人と触れ合って楽しい時間を過ごせば機嫌がよくなって、脳に好影響を与えます。一人での外出が心配ならGPS機能の付いたスマホを持たせたり、緊急連絡先のメモを持たせたりすればいいのです。