会見で明らかにならなかった2つの「疑惑」

大谷翔平は野球ではスーパーヒーローだが、社会人としては幼かった。会見を見ていてそう思った。

エンゼルスとのオープン戦の1回、ファンの声援にヘルメットを取り応えるドジャースの大谷翔平=2024年3月26日、アメリカ・アナハイム
写真=時事通信フォト
エンゼルスとのオープン戦の1回、ファンの声援にヘルメットを取り応えるドジャースの大谷翔平=2024年3月26日、アメリカ・アナハイム

なぜなら、彼の専属通訳でMLBに来て以来、盟友ともいうべき存在だった水原一平氏が、スポーツ専門チャンネル「ESPN」のインタビューで、「ギャンブル依存症だった」「(借金が違法賭博によるものだということを知らせずに=筆者注)大谷が450万ドル(約6億8000万円)の借金を肩代わりしてくれた」「大谷のパソコンから大谷の口座にログインし、数カ月にわたって1回あたり50万ドルを8~9回送金した」と話しているのである。

アメリカ捜査当局は、送金された金が大谷の口座からだったことをすでに確認しているという。

翌日、水原氏はこの証言を翻し、「大谷は何も知らなかった」と否定しているが、どちらが信用できるかは言わずもがなである。

大谷が窃盗被害にあったとして、代理人が捜査当局に刑事告訴したとも報じられている。

したがって、大谷に向けられた「疑惑」は、「水原氏の借金が闇賭博によるものだったと知っていたのか」「水原の借金返済を肩代わりして、自分の口座から送金したのか」の2点に絞られる。

社会人としての“幼さ”が透けて見えた

違和感をもった一つは、会見といいながら、記者の質問を一切許さなかったことである。大谷には身の潔白を主張する権利があるが、記者の側には質問する権利がある。一方の権利を蔑ろにしたのでは、会見ではなく「ただの弁明の場」である。

日本のメディアは大谷翔平の威光の前にひざまずき、彼の言葉をただ書き写すだけだが、欧米メディアの記者はそうではない。質問をさせないのは何かやましいことがあるのではないかと疑う。これでは大谷のいい分の半分も彼らには届かない。

思い返せば、電撃結婚発表の時も同じような違和感があった。大谷が「結婚しました」と発表したインスタグラムの最後にこう付け加えたのだ。

「今後も両親族を含め無許可での取材等はお控えいただきますよう宜しくお願い申し上げます」

取材規制ともとれる文言である。欧米の記者たちはこれを見て怯えることはなかったが、日本人記者には有効だったはずだ。さらに囲み会見で、記者から「会見したのはどういう意図か」と聞かれ、大谷は「皆さんがうるさいので。しなかったらしなかったでうるさいですし」と、どこへでも付きまとい嗅ぎまわるパパラッチ的取材を批判して見せたのである。

本音だとは思うが、メディア対応という点でいえば疑問符がつく。同じ戌年のフィギュアスケートの羽生結弦と同様、社会人としての“幼さ”が透けて見えたと思う。