メディアは「水原単独犯」で落ち着いたようだが…
「ただ、シーズンも本格的にスタートするので、ここからは弁護士の方にお任せしますし、僕自身も警察当局の捜査に全面的に協力したいと思う。気持ちを切り替えるのは難しいですが、今日お話しできて良かったと思っている。これがお話しできるすべてなので、質疑応答はしませんが、これからさらに進んでいくと思います」
ありがとうございましたといって、通訳と席を立って行った。
私が見た限り、その日の朝のワイドショーは、おおむね大谷に好意的なものが多かったようだった。
「大谷自身の口から真実を語った」「ここで話したことがもし嘘だったら大谷の野球人生は終わる。その覚悟をもって臨んだ」「大谷は違法賭博に手を染めていないし、闇賭博へ送金もしていない」
中には、当然だが、現実に闇賭博へ送金がされているのだから、大谷が関与しなくて可能なのだろうかという疑問は出たが、水原一平氏が大谷の口座の暗証番号を知っていたのではないか、大谷のサインを真似て口座から引き出して送金したのではないかという「水原一平単独犯」というあたりで落ち着いたようだった。
スポニチは代理人送金システムを紹介
この事件を捜査しているのは日本の国税庁にあたる内国歳入庁だといわれる。大谷のいうように、大谷の手を煩わせずに彼の口座から多額の金を送金できるものなのだろうか。
私はアメリカでの事情に詳しくないので、スポニチ(3月27日付)から引用してみたい。
「実は水原氏による送金が可能な方法がある。その一つが『Power of Attorney(POA=委任状)』というシステムだ。日本人大リーガーの銀行口座開設などの経験のある関係者は『日本人選手は言葉の壁があり、米国の銀行のシステムも分からない。マネジメント会社のスタッフなど信頼できる人物に頼むのは普通のこと』と証言する。その際に用いられるのが『POA』。この委任状によって法的代理人をつくることが可能になり、オンラインバンクで代理人が銀行口座を動かす権限が与えられるという」
この代理人が、水原氏だった可能性があるという。また登録する際は、口座名義人の大谷ではなく代理人の連絡先にした場合、二重、三重の厳しいセキュリティーでも本人の知らないところで金を動かすことができるというのだ。
「もう一つの方法が『Check writing privileges』。これは日本でいう『振込代理権』で、口座名義人の許可を得た人物の送金が可能になるというもの。上限は50万ドル(約7550万円)で、水原氏がESPNの取材に答えた際の振込額と合致する」