サイゼリヤの「ミラノ風ドリア」はもともと480円で大人気商品だった。にもかかわらず、正垣泰彦会長は290円に値下げし、原価率を上げ、客単価を下げてしまった。一体なぜなのか。正垣会長の著書『サイゼリヤの法則 なぜ「自分中心」をやめると、ビジネスも人生もうまくいくのか?』(KADOKAWA)より、一部を紹介しよう――。

お客にとっての一番の喜びは「安さ」

私たちは人の役に立つことで、この世界とつながり、調和していくことができます。みんなが幸せになるから、あなたも幸せになり、人生もビジネスもうまくいく、というわけです。

サイゼリヤは、昔から「人に一番喜んでもらえることをしよう」という気概でやってきました。「一番儲かることをしよう」ではありません。

では、お客様の立場で考えたときに、一番喜んでもらえることは何でしょう?

それは「安さ」ではないでしょうか。もちろん、安くてまずいなら、当たり前。安いのに、おいしい。このおいしさで、この価格なら、大満足!

誰でもお財布を気にせず、お腹いっぱい食べて、飲んで、仲間たちと語らって、「ああ、楽しかったな」と満足して帰ってほしい……。そのために私は努力をしてきました。

サイゼリヤは、創業期の「7割引き」から始まり、断続的に値下げをしてきました。

原材料費が高騰していても、サイゼリヤはほとんど値上げはしていません。むしろ値下げした商品もあるくらいです(もちろん、味も日々改良しています)。

さほど売れないものを安くするのは、比較的簡単です。一方で、すでに何度も値下げと改善を経てきた人気商品を、さらに安く、おいしくしていくのは簡単ではありません。

しかし、これが最もお客様に喜ばれるのです。

「ミラノ風ドリア」の誕生秘話

サイゼリヤで最も売れている人気商品「ミラノ風ドリア」をご存じでしょうか。300円というお値打ち価格で、長年愛され続けている看板商品です。

ミラノ風ドリア
写真提供=サイゼリヤ
ミラノ風ドリア

そのルーツは1970年頃の従業員のまかない飯にまでさかのぼります。ライスの上にホワイトソース、ミートソース、粉チーズをかけたものを、常連客から「自分も食べたい」と要望されたのが誕生のきっかけ。

当初は裏メニューでしたが、あまりに評判が良いので定番メニューに昇格。480円で販売されるようになり、大人気商品に育ちました。

そして1999年11月。上場を機に290円に値下げしたところ、さらに爆発的人気となりました。