全国展開するビジネスホテルチェーン「ドーミーイン」には、熱狂的なファンがいる。彼らの多くは、大浴場の快適さを挙げる。どこがすごいのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする――。(前編/全2回)

出張族に愛されるドーミーインの4本柱

昨年12月下旬、東京駅から東海道新幹線に乗車して数泊の取材出張に出掛けた。年末帰省や観光旅行の直前だったが、東京や名古屋など主要ターミナル駅は大混雑していた。

コロナ禍が明けた現在、「宿泊を伴う国内出張」に行く人も多いだろう。筆者はこれまで数回、仕事関係者を通じて出張時の「ビジネスホテル選び」を調べてきた。個別の声は後述するが、重視するのは「朝食」、「大浴場」、「快適性」や「駅近」だった。

出張族に人気のビジネスホテルに「ドーミーイン」(運営会社:共立メンテナンス)がある。各種のビジネスホテル調査でも必ず上位にランクインし、筆者も過去に利用してきた。

「国内出張の多い私にとって、ドーミーインは定宿じょうやどともいえる存在。これまでに50泊はしてきたと思います」(50代の男性)

同ホテルのこだわり4本柱は「①快適な客室②大浴場(サウナ)③朝食④夜鳴きそばを含む無料サービス」と聞く。どんな思いで運営しているのか、施設を訪れて責任者に話を聞いた。今回は大浴場と朝食を紹介したい。

80%超のホテルで「天然温泉」を実現

「当社は1979年に設立後、学生寮や社員寮の運営で事業を拡大し、現在も全国に500棟以上を展開しています。寮事業で培ったのが、入寮者の方に『わが家』と感じてもらえるような取り組みで、ホテルでも“食・住・癒”のサービスを心掛けています。

ドーミーインブランドでは現在、全国に95棟を展開していますが、1995年に開業した2棟目の『ドーミーイン蘇我』(当時。現在は『ドーミーイン千葉City Soga』)から浴場と、それに付随したサウナを設置するようになりました」

共立メンテナンスの平山恵一さん(ドーミーイン事業本部 首都圏事業部部長)はこう話す。宮城県仙台市出身の平山さんは、仙台のほか、北海道や中四国九州の施設でも勤務してきた。

ドーミーイン事業本部 首都圏事業部部長の平山さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
ドーミーイン事業本部 首都圏事業部部長の平山さん

同ホテルに宿泊経験がある人はご存じのように、多くの施設で「天然温泉」を掲げている。

「施設によって掘削くっさくした“自家源泉”と“運び湯”がありますが、95棟のうち78棟が天然温泉大浴場を完備しております。唯一、大浴場を設置していない施設が『ドーミーインEXPRESS松江』(島根県松江市)で、その分、快適にお過ごしいただけるよう全室にテレビモニター付バスルームを設置し、フロントにて入浴剤も提供しています」(平山さん)

「出張先のホテルで私が選ぶ基準は、①アクセス、②新しい(キレイ)、③バス・トイレ一緒の設備はイヤ(大浴場あったらうれしい)の3つです」(30代前半の女性)

昨年の筆者調査ではこんな声も聞いた。近年はビジネスホテルでもトイレ・バス・洗面台を別々に設置する「3点分離」が進むが、ドーミーインはさらに先の快適性を訴求している。