朝食に「ひつまぶし」が出る
「朝食」も長年の寮運営で培った経験を進化させてきた。
「各施設の立地の特徴を生かした朝食を提供するのがモットーです。ドーミーイン池袋では“町中華”が多い池袋の特性を考え、中華メニューに力を入れました。焼き餃子やシューマイ、チャーハンの他、中華小鉢もたくさんご用意しています」(平山さん)
こちらは2階のレストランにてビュッフェスタイルで楽しめる。朝食に力を入れる競合ホテルにも宿泊してきたが、餃子やチャーハンがあるのは珍しい(朝食料金:2300円、3歳以上~小学生以下:1100円、2歳以下:無料。すべて税込)。取材当日は季節のラーメンとして「牡蠣そば」が用意されており、1杯ずつ手作りで提供されていた。
前夜、名物「夜鳴きそば」(ハーフサイズで宿泊客は無料。21時半~23時提供)も味わったが、あっさりした醤油味。一方の朝食提供「牡蠣そば」は塩味だった。
別の日、名古屋出張の前に豊橋駅で下車して「ドーミーインEXPRESS豊橋」(愛知県豊橋市)を訪れた。12月13日にオープンしたばかりの新施設だ。こちらの朝食も地元色を打ち出している。目を引いたのは「ひつまぶし」や「どて煮」などのメニューだ。(朝食料金:1800円、3歳以上~小学生以下:900円、2歳以下:無料。すべて税込)
「愛知県のご当地料理である“ひつまぶし”や“どて煮”などのほか、豊橋に本店がある“ヤマサちくわの豆ちくわ”も提供しており、卵や白米、牛乳、ヨーグルトなども地元産を用いています」(「ドーミーインEXPRESS豊橋」支配人の山本章さん)
これまで別企画でも当地を取材してきたが、養鰻業が盛んな浜名湖や三河一色に近いせいもあるのだろう。豊橋市や豊川市は「うなぎ」の名店が多い。
進化する消費者の先を考える
近年、有名になったのが「豊橋カレーうどん」だ。うどんの下にとろろご飯とウズラの卵があるもので、2010年に誕生し、老舗店「玉川うどん」(豊橋市広小路)が中心的な役割を担ったと聞く。
「カレーうどんは、ドーミーインEXPRESS豊橋でも開発中です。特にビジネスでご利用されるお客さまは、仕事の都合でご当地の名物料理を楽しめない時もあると思います。今後もお客さまの声を参考に、地元らしいメニューに注力していきます」(ドーミーイン事業本部 東海北陸エリア リーダー 近藤修一さん)
こんな声も紹介しよう。「私の出張ホテル選びは、①朝ごはんの内容、②大浴場があるか、です。立地場所はタクシーを使うことも多く、優先度は低いです」(30代後半の男性)。
マーケティングや商品開発の現場では「消費者はどんどん進化する」という共通認識がある。ドーミーインが最初に訴求した1995年にはなかった「ビジネスホテルの大浴場」も今では多くの競合が取り入れるようになり、それを利用する消費者の目も肥えた。
「朝食」も同様だ。和食・洋食・中華メニューに加えて、各施設ならではの特徴を打ち出さないと支持が広がらない。中には「朝食付き」として提携する近くのカフェでパンメニューを提供するビジネスホテルもあるが、施設内でメニューを深めるホテルも増えてきた。
とはいえ、ラグジュアリーではないビジネスホテルは「経費」や「予算内」で宿泊するお客(消費者)と向き合う。その中で何にこだわり顧客満足を追求するか。後編ではドーミーインの「サウナ」を中心に紹介したい。