各地で問題となっている放置竹林を無償で伐採し、独自の方法で飼料や肥料に加工する宮崎県の企業が注目を浴びている。竹林問題が片付くだけでなく、それを食べた牛や豚は肉質が飛躍的に向上し、農作物の育ちもよくなるとの評判を聞きつけた自治体などからの視察や連携協定依頼が殺到している。ライター・水野さちえさんが同社を取材した――。
祖業は石油の地下タンク検査、今は竹で稼ぐ
伐採後に粉砕されて間もない生竹の山に手を入れると、ほんのり温かい。もう発酵が始まっているのだ。
「竹に含まれる乳酸菌効果ですね。パンダが笹を食べてあんなに大きく育つのにも影響しているかもしれません」
そう話すのは、大和フロンティア(宮崎県都城市)の専務・田中裕一郎さん(45)。IT関連企業勤務から、2005年に兄・浩一郎さんが創業した大和フロンティアに入社した。
「創業時は、ガソリンスタンドや運送会社などにある、石油の地下タンクの検査事業がメインでした」
現在も宮崎県内の約6割の地下タンクの検査を手がける大和フロンティア。創業当初こそ新規顧客を順調に獲得したが、ほどなく地下タンク検査業だけでは事業性が厳しいことに気が付いた。
「地下タンクの検査は3年に1回のところが多いうえに、補助金の関係で作業が毎年秋から冬に集中します。創業時に、検査で使うダンプカーを購入したのですが、春から夏の閑散期に何かできないかと考えました」
都城市は霧島連山のふもとに盆地が広がる、全国有数の畜産や林業が盛んな地域だ。そこで田中さんは、杉の鋸屑を仕入れて飼料に加工し、畜産業者に販売する事業に参入した。事業は軌道に乗り、自社で杉の粉砕機を導入するまでになる。しかし保有するトラックが20台を超えたころ、今度は杉が調達困難になった。
「さまざまな業界でバイオマス燃料の需要が増え、杉の価格が2倍以上に高騰しました。さらに中国への輸出も進み、林業が盛んな都城でさえも杉の供給量が足りなくなったのです」