なぜ日本では「空き家問題」が発生しているのか。空き家コンサルタントの和田貴充さんは「売却するのか、賃貸に出すのか、親族の誰かが使うのか……。結局は、家族の心が決まらないため、放置される空き家が増えてしまっている」という――。

※本稿は、和田貴充『今すぐ、実家を売りなさい』(光文社)の一部を再編集したものです。

空き家となった住宅
写真=iStock.com/akiyoko
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実家が「空き家」になる前にやっておくべきこと

現在、別居ではあるが、親も健在。自分たちは家族で自宅を購入・賃貸して幸せな日常を過ごしているみなさん。

このタイミングだからこそ、空き家対策は効くのです。年老いた両親がいるなら、いずれ実家が空き家になる日に備えて、今からできることに取り組んでいきましょう。この本では、みなさんにこう提案していきたいと思っています。

なぜなら、実家が空き家になる前に準備ができていれば、実際に空き家になったときに悩まずにすむからです。

誰も人が住んでいなくてもかかる費用(固定資産税、火災保険などの保険類、電気、ガス、水道といった公共料金、庭木の剪定や掃除といった管理費)を、払わずにすむことができるのです。

ここからは、実家や空き家の状態と、読者のみなさんの立ち位置を対応させながら、僕が考える処方箋をお話ししていきたいと思います。図表1をご参照ください。

最も大切なのは親との会話

タイプ①特効薬は「家族の会話」

まずは図表1の①の状況に当てはまるという方に実践していただきたいこと。実家を空き家にしないためにもっとも大切なのは、まずは両親からどうしてほしいかという意向を聞いておくことです。ただ、ナイーブな内容ですから、話をするにあたって配慮が必要ですね。

実家に帰省して、「ねえ、お父さんとお母さんが亡くなったら、この家はどうしたらいい?」といきなり切り出したら、「そんな話はするんじゃない!」と怒られてしまいそうです。

そこでおすすめなのが、思い出話をすることです。帰省したときにふとした会話の中に出てくる思い出話の機会を逃さず、親が実家の土地や家屋をどうしたいと考えているかを、さりげなく聞き出すのです。とりわけ、子どものころの思い出話は盛り上がるもの。

例えば、僕にも小学校時代の鉄板エピソードがあります。僕は小さいころ、暗いところが大嫌いでした。でも、子どもながらに弱いところを見せたくないと思っていたのか、2階の部屋に行くときには、まず妹に先に行かせて電灯をつけさせてから、おもむろに自分も階段を上っていたものです。僕の怖がりは家族にバレていて、みんな気づかないふりをしていたのです。この話をすると「そういうこともあったねー」と家族でいつも盛り上がり、笑いが起きます。その笑いが起きたときが絶好のチャンス。

「あれから40年経ったよね。この家も建て替えするの?」とさりげなく聞くのです。すると親も、「自分たちが死んだら、この家は売っていいよ」「家の処分については遺言書に書いておくけど、物が多いから少し処分しておこうかね」などと前向きに考えてくれるでしょう。