※本稿は、福岡伸一、松田美智子『生物学者と料理研究家が考える「理想のレシピ」』(日刊現代)の一部を再編集したものです。
一日6個で必要カロリーは充足する
もしカップラーメンだけで生活したらどうなるだろうか。栄養失調に陥るだろうか。あるいはハンバーガーだけで生活したら……?
カップラーメン1個のカロリーは、およそ351キロカロリー(日清食品のカップヌードルを例にする *図表1参照)。ハンバーガーのカロリーはおよそ307キロカロリー(種類によって異なるので、ここではマクドナルドのチーズバーガーを例とする *図表1参照)。
日本人の一日に必要な食事カロリー数の標準値は、男2300キロカロリー、女1900キロカロリー(いずれも50歳)。男女差は体格(体重)差による。平均値を2100キロカロリーとすると、カップラーメンなら一日6個、ハンバーガーなら7個食べると、一日の必要カロリーを充足することになる。
食事のカロリー源は、主に炭水化物と脂質であり、体温の維持、運動、基本的な代謝反応などに使われる。つまり体内に取り込まれたあと、エネルギーとなって燃焼される。燃焼されると消えてしまから(燃えカスは二酸化炭素と水となって排泄される)、また次の日、補給が必要となる。自動車にガソリンを入れるようなものである。
「重要なミネラル」が不足することはない
カロリーは充足できるとして、カロリーにはならない他の必須栄養素、たとえばナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、鉄などのミネラル、あるいは各種ビタミン類は、カップラーメンもしくはハンバーガーだけで足りるだろうか。
図表2を見ていただきたい。チーズバーガー一個には、ナトリウム720mg、カリウム210mg、カルシウム118mg、リン182mg、鉄1.2mgが含まれている。7個食べると、この7倍、ナトリウム5040mg、カリウム1470mg、カルシウム826mg、リン1274mg、鉄8.4mgとなる。
一方、日本人(50歳)の一日に必要な食事由来のミネラル摂取の推奨量は、ナトリウム600mg、カリウム2000mg、カルシウム600mg、リン700mg、鉄10.12mg(経血があるので女性の方が必要量は多くなる)である。
カップラーメンやハンバーガーだけで生活しても、骨や歯のために必要なカルシウム、血液成分の鉄など重要なミネラルが不足することはない(カリウムはやや少なめとなる)。