世界経済に黄色信号が灯りかねない

このところ、中国の不動産デベロッパーは、米国、カナダ、英国、オーストラリアなどで商業用不動産などの売却を増やしているようだ。時には、フェア・バリュー(理論的に公正と考えられる価格)を下回る価格で資産を売却するケースもあるという。不動産投資の専門家の中には、「中国投資家の投げ売りが始まった」との見方もある。

中国共産党中央委員会総書記で中央軍事委員会主席でもある習近平国家主席は、2024年2月8日、中国北京の人民大会堂で開かれた春節レセプションでスピーチを行った。
写真=EPA/時事通信フォト
中国共産党中央委員会総書記で中央軍事委員会主席でもある習近平国家主席は、2024年2月8日、中国北京の人民大会堂で開かれた春節レセプションでスピーチを行った。

売却が目立ち始めている背景には、不動産デベロッパーの資金繰りの悪化があるようだ。中国国内の仕掛けの建設案件の継続もあり、彼らの資金の支出に歯止めがかからないのだろう。現金を確保すべく、海外資産の売却を急ぐ中国企業は今後も増える可能性が高い。それは、世界的な不動産市況の悪化を通して、経済の下押し要因になるはずだ。

米国では、ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の業績不安が高まり、株価は不安定な展開になった。今後も同行の商業用不動産関連の引当金が増加するとの懸念は強い。余波はドイツのファンドブリーフバンク(PBB)などにも及んだ。

中国政府の不動産バブル崩壊への対応は依然として遅い。中国の不動産市況の悪化には、なかなか歯止めがかからない。それが世界の商業用不動産の低迷を誘発するようだと、世界経済にも黄色信号が灯ることになりかねない。

碧桂園の経営陣は「2024年もかなり厳しい状況」

足許、中国の不動産デベロッパーなどは、保有する海外のビルや住宅開発プロジェクト権益の売却を急いでいる。それを象徴する発言があった。1月、民間不動産デベロッパー最大手、碧桂園(カントリー・ガーデン)の経営陣は、「2024年も中国の不動産市場はかなり厳しい状況に直面する恐れがある」と警鐘を鳴らした。当面の間、中国のマンションや商業用不動産の価格の下落は続く可能性が高い。

中国政府は購入者の不安や批判を抑えるため、不動産業者などに対して仕掛け中のマンションなどを完成させるよう要請を強めている。デベロッパーなどは、債務の返済に対応しつつ建設を完了させなければならない。中国の景気低迷が深刻な中、資金繰りの逼迫ひっぱく感は高まった。

不動産デベロッパーなどは、資金確保を急ぐ必要が増している。それによって、海外の不動産や、進行途中の不動産プロジェクト権益の売却が増加した。