購入価格を45%下回る価格で“投げ売り”

カナダでは、中国奥園集団(チャイナ・アオユエン・グループ)が集合住宅の開発案件を売りに出した。報道によると、トロントで進めた案件は2021年の購入価格を約45%下回る価格で売却された。カナダ中銀の金融引き締めで不動産市況がいくぶんか鈍化したとはいえ、45%のディスカウントは顕著だ。

英国では、広州富力地産(グアンジョウ・R&F・プロパティーズ)がロンドンの不動産開発案件の売却を目指しているようだ。同社は、ドル建て債務の一部引き受けと1香港ドル(19円程度)の現金の受け取りを取引相手に求めていると報じられた。

オーストラリアでは、カントリー・ガーデンがシドニー近郊の住宅開発案件の権益売却で合意したと報じられた。2019年スタートの本プロジェクトは、3600戸の住宅建設を目指した。しかし、カントリー・ガーデンの経営危機で進行は遅れ、2023年10月時点で建設中の住宅は50戸を下回ったようだ。

金融への打撃が時間差で訪れる中国の事情

昨年、世茂集団控股(シーマオ・グループ・ホールディングス)もロンドンのオフィスビルを売却した。売却価格は当初の合意水準から、追加で15%程度引き下げられたという。潜在的な買い手はシーマオ側の窮状に目をつけ、低価格でのディールを求めた。シーマオ側は、要求に応じざるを得なかったのだろう。

今後、資金繰りに逼迫する中国の企業は増加することが懸念される。2020年8月、中国政府が“3つのレッドライン”を導入した以降、中国の住宅価格は下落基調が続いている。販売も増えていない。未完成を含め、住宅の在庫は多いようだ。不動産価格が下げ止まるには時間がかかるだろう。

国際通貨基金(IMF)によると、中国では、貸し手が不良債権の計上を遅らせることができる。そのため、不動産価格の下落や、銀行バランスシートへの打撃の発生タイミングは後ずれしやすい。不動産企業の経営破綻も遅れ、時間の経過とともに事態は深刻化する恐れは増す。