不動産ショックの波はアメリカの銀行にも

中国不動産市況が一段と悪化するリスクは高く、中国の不動産関連企業は資金確保を急ぐ可能性は高まるとみられる。「売るから下がる、下がるから売る」の負の連鎖は勢いづき、中国の保険会社など大手金融機関が、国内外に保有するビルやホテルを売却する可能性もある。それが、世界経済の足を引っ張ることも想定される。

そうした兆候は少しずつ顕在化している。1月31日、米地銀ニューヨーク・コミュニティ・バンコープ(NYCB)の決算は予想外の最終赤字に沈んだ。金融引き締め、テレワークによるオフィス需要減少、中国勢の売却圧力の高まりなどを背景に、商業用不動産向けの融資価格が下落し引当金が急増した。

業績懸念は、ニュージャージー州を本拠とするバレー・ナショナル・バンクコープにも伝播した。8日、イエレン財務長官は、「商業用不動産市場の低迷で一部の金融機関のバランスシート劣化リスクは高まった」との認識を示した。

ウォール街の標識
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日本が陥った“失われた30年”の再来になるのか

当面、中国の不動産市況の悪化は続くだろう。中国勢は海外の商業用不動産や住宅開発案件の権益売却を、さらに急ぐことになるだろう。中国からの資金流入が増えた米国、欧州、オーストラリア、カナダ、そしてわが国などの商業用不動産や住宅市況の不安定感も高まる恐れもある。

中国政府の政策運営は、今のところ、本格的な効果を発揮するまでに至っていない。確かに、銀行による不動産企業への融資の積み増しや、公的な資金を用いた株式の買い支えなど、1990年代にわが国が行った政策と同様の対策を発動した。

しかし、長い目で見ると、市場への介入は一時的な効果しか生まないだろう。“失われた30年”などと呼ばれるわが国経済の長期停滞を振り返ると、不良債権処理の先送りは事態を悪化させる。