結婚と妊娠

山口さんは23歳になる頃、高校2年生の頃から交際していた1つ上の先輩と結婚し、同じ年に第1子を妊娠。喜びもつかの間、ひどいつわりに襲われる。食べられない、水分も摂れないで脱水症状を起こし、入院。3カ月で退院するも、つわりで動くことができず、1日中寝たきりの生活が続いた。

ところが、夫は山口さんをいたわるでもなく、仕事からの帰宅時間が遅くなっていく。会社の後輩に誘われたのがきっかけで、パチンコやビリヤードなどに行き始めると、そこからさまざまな遊びにのめり込んでいった。

夫の正体

山口さんは無事長男を出産。夫は立ち会ったが、「女として見れなくなった」と言い、山口さんはショックを受ける。妊娠中に遊びを覚えた夫は、家事にも育児にも全く関心を持たなかった。5年後に長女を出産するときも夫は立ち会ったが、やはり子どもと積極的に関わろうとはしない。

結婚して6年ほど経った頃、山口さん(当時29歳)の母親(当時56歳)の勧めで、山口さんの実家の隣に家を建てた。20歳の時に亡くなった父親の形見分けで、山口さんの名義になっている土地だった。

家が完成すると、山口さんの母親が毎日のように入り浸るようになった。一方、夜遊びに明け暮れていた夫は、ますます家に帰ってこなくなっていった。

そして結婚して10年目。義父が急な病で亡くなった。山口さんは夫と子どもたちとともに義父の通夜・葬儀に参列する。すると夫は、葬儀場に着くなり妻と子どもを放り出し、義父を亡くして肩を落とす義母に駆け寄る。

線香を持つ手元
写真=iStock.com/Yuuji
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山口さんは、10年前の結婚式以来、初めて顔を会わす親戚ばかりの中、どこに座ったらいいかも分からず立ち尽くし、とりあえず空いている席に腰を下ろした。

通夜の後、夫は義母や兄とともに葬儀場に泊まり、山口さんは子どもたちを連れて帰宅。

翌朝、再び葬儀会場に行くと、夫はこう言った。

「お前、昨日一般席に座ってたんだって? 今日はちゃんと親族席へ座れよ! お袋が恥ずかしかったって言ってたぞ!」

葬儀が終わり、精進落とし(お斎=おとき)が始まると、お膳がひとつ足らない。「お前が遠慮しろ」という空気を感じた山口さんは、夫に助けを求めて振り返ると、夫はさっさと座って食べ始めている。

愕然としつつも山口さんは、「お膳が足らないらしいから、私はコンビニにおにぎりを買いに行ってくる」と嫌味混じりに夫に伝えると、夫は顔も上げず「チョコ買ってきて」と答えた。