ビジネスシーンで頻繁に起こる誤った日本語

名刺交換のシーンでほとんどの人が誤用している
× ちょうだいいたします

○ ちょうだいします

ビジネスシーンで、必ず行なう名刺交換。

そのとき、「ちょうだいいたします」と言う人がとても増えてきました。名刺をもらう相手に丁寧な言葉を使わなければいけないという意識が、「ちょうだい」と「いたします」という二つの言葉を合わせてしまった結果なのですが、日本語としては間違いです。

名刺交換のときは「ちょうだいします」と言うのがもっとも適当です。

「ちょうだい」は漢字で「頂戴」と書きますが、これは両手を自分の頭上に上げ、非常に高い身分の人から賞などを授与されることを表します。

「ちょうだい」だけで謙譲を表しているのに、これに「いたします」という自分や自分の側を下位に置いて、相手を重々しく敬うための言葉を使うと、丁寧すぎて、かえって慇懃無礼いんぎんぶれいな言い回しになってしまうのです。いわゆる、二重敬語と呼ばれるものです。

「拝見します」を「拝見いたします」というのも、同じく二重敬語です。

「ちょうだいいたします」「拝見いたします」という言い方が段々と定着してきていますが、とくに相手がお年を召した方などであれば、慇懃無礼だと怒られる場合もありますので、気を付けたほうが賢明です。

名前を教えることは、相手に自分の魂を渡すこと

初対面の相手の名前を知りたいとき
× お名前をちょうだいできますか

○ お名前をお聞かせ願えますか

相手の名前を教えてもらいたいときに、「お名前をちょうだいできますか」と言う人がいます。

「下のお名前をちょうだいできますか」などと言われると、「いやぁ、困ったなぁ」と思ったりもします。「ちょうだいできますか」という質問が、「名前を教えてください」という意味であることは十分わかるのですが、「ちょうだい」とはもともと物や賞などを相手からうやうやしく受けることを意味します。

仕事で電話をする人のイメージ
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです

自分の名前を相手に教えることはできますが、恭しく「ください」と言われても、あげるわけにはいかないものです。

さて、平安時代の紫式部や清少納言など、昔の女性の本名は現在でも分かっていません。それは、決して人に本当の名前を教えなかったからです。

当時、名前を教えることは、相手に自分の魂を渡すことだとされていました。名前を教えるということは、それほど恐ろしいことだったのです。

また「下のお名前」というのも不適切です。名前はひとつだけで、上も下もありません。そんな場合には、「お名前を、フルネームで教えていただけますか」あるいは「姓と名をそれぞれお聞かせ願えますか」「フルネームをお伺いしてもよろしいでしょうか」と言うようにしましょう。