ビジネスシーンで間違えやすい日本語は何か。中国文献学者の山口謠司さんは「名刺交換で『ちょうだいいたします』は大間違いだ。漢字で『頂戴』と書くが、これは両手を自分の頭上に上げ、非常に高い身分の人から賞などを授与されることを表す。とくに相手がお年を召した方などであれば、慇懃無礼だと怒られる場合もありますので、気を付けたほうが賢明だ」という――。(第2回/全7回)
※本稿は、山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
「今日は休みます」では自分主体になってしまう
体調不良や急用で仕事を休みたいとき
× 休まさせていただきます
↓
○ 休ませていただきます
× 休まさせていただきます
↓
○ 休ませていただきます
「このシャツを着るね!」と言ったら、「自分から進んで着る」ことになります。
「着させていただきます」と言えば、「着る」という自分の行為をへりくだっていることになります。
さて、「今日は休みます」と言ったら、病気や用事などで「自分から、会社や学校などを休む」ということになります。
一方で、「休ませてください」と言えば、「休むこと」を許可してもらうことになります。これを丁寧に言うと、「休ませていただきます」になります。
ここで注意するべきは、「休まさせていただきます」という言い方はないことです。「さ」が余分なのは、「やらさせていただきます」「読まさせていただきます」が誤りであるのと同じです。
なぜ、「さ」が余分なのかというと、五段活用の動詞は「未然形+せる」という活用のルールがあるからです。
さらに、「させ」は強い意志で相手の許可を求めているような印象を与えてしまいます。「休まさせていただきます」は、相手が許可するしないにかかわらず、自分の意志を貫こうとする印象になってしまうのです。
「させ」か「せ」かと悩んだときには、「させ」という言葉を使わないようにすると無難です。