使うと恥をかく日本語は何か。中国文献学者の山口謠司さんは「『役不足』とは、『能力に対して、役目が不相応に軽いこと』を意味する。しかし、ある調査では6割の人が『本人の力量に対して役目が重すぎること』と認識している。大きな仕事を頼まれたときに正しい返答は『力不足なので不安です』である」という――。
※本稿は、山口謠司『もう恥をかきたくない人のための正しい日本語』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
6割の人が誤って認識している言葉
ビジネスシーンで間違って使われやすい「役不足」
× 役不足なので不安です
↓
○ 力不足なので不安です
× 役不足なので不安です
↓
○ 力不足なので不安です
平成18(2006)年度に行なわれた文化庁国語課の「国語に関する世論調査」で、「役不足」をどういう意味で使っているかという質問がありました。
(ア)本人の力量に対して役目が重すぎること
(イ)本人の力量に対して役目が軽すぎること
みなさんは、どちらの意味で使っていますか。正解は、(イ)です。「役不足」とは、「能力に対して、役目が不相応に軽いこと」を意味します。
『文化庁月報』(平成24年2月号)には、次のような例文が掲載されています。
「部長、どうして私をプロジェクトチームに入れてくださらなかったのですか。」
「君を外したのは、役不足だったからだよ。」
このやりとりは、「役不足」を先の(ア)(イ)、いずれの意味で取るかによって、正反対の内容になってしまいます。
平成18年度の調査では、(ア)の意味が正しいと考えている人が50.3%、(イ)が正しいと考えている人が40.3%という結果でしたが、令和になってからは(ア)を正解と考えている人が60%を越えるのではないかと言われています。
会話に出てくると一瞬、どっちが正しい使い方か分からなくなってしまいますが、「役不足なので不安です」という言葉は誤りなので、大きな仕事を頼まれたときは「力不足なので不安です」と言うようにしましょう。