日立製作所は、英国で原子力発電事業を営むホライズン・ニュークリア・パワーの買収に踏み切った。同社を設立した独エネルギー大手のエーオンとRWEの2社から11月末までにホライズンの全株式を6億7000万ポンド(約850億円)で取得する。ライバルの東芝、仏アレバなどと比べ、海外原発受注で劣勢に立たされている日立が、自社製軽水炉で獲得した初の海外受注となり、ホライズンの買収によって海外原子力事業に弾みをつけたい考えだ。

日立は原子力事業を成長戦略の柱に位置づけ、2011年度に1600億円だった売上高を、20年度に約2.3倍の3600億円に引き上げる計画だった。しかし、東京電力の福島第一原発事故の影響から国内での事業展開は見通しが立たず、目標達成には海外に活路を見出すしかなくなった。ホライズンの買収を発表した10月30日の記者会見で、日立の羽生正治執行役常務は買収の狙いを、「発電所を建設する場がどうしても欲しかった」と語ったのが、同社の本音を何よりも物語っていた。

しかし、完全子会社となるホライズンの買収は、メーカーが原発機器を原発事業会社に納入し、建設するこれまでのケースと大きく異なり、日立自らが原発建設から運営まで原発会社を丸ごと抱え込むリスクを抱えてしまう。この点について、同社は買収後、出資・運営するパートナー探しを本格化し、許認可を得て、5年程度はかかると想定される原発建設までに、ホライズンへの出資比率を50%未満に減らす意向を表明している。

日立が引き継ぐホライズンの事業計画によれば、英国の2カ所に130万キロワットクラスの原発を合計4~6基建設し、20年代前半に1基目の運転開始を目指している。原発1基の建設には約5000億円を要するとされ、巨額な買収額と長期にわたる投資回収と合わせて、今回の買収が今後の原子力事業にとって重い足かせとならない保証はない。

日立の海外原子力事業をめぐっては、受注が確実視されているリトアニアの原発建設に、10月の国民投票で6割超が「原発ノー」を突き付けた。この結果に建設を止める強制権はないが、今後、建設見直しなど紆余曲折は十分予想される。その矢先のホライズン買収は、大きなリスクと同時に、原子力事業を成長戦略に位置づけた日立の意地が滲み出る。

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