宮内庁は1月22日、天皇・皇后両陛下の長女愛子さまが、大学卒業後の今年4月から、日本赤十字社で嘱託職員として勤務することが内定したと発表した。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「敬宮殿下は学習院女子中等科1年の時に『看護師の愛子』というファンタジー短編小説を書いておられる。その中で表現されていた心の奥にある願いが、今回の日赤へのご勤務という形で結実したといえるのではないか」という――。
愛子さまの選択
さる1月22日、天皇・皇后両陛下のご長女、敬宮(愛子内親王)殿下が学習院大学ご卒業後、皇室との縁が深い日本赤十字社の嘱託職員として勤務されることが内定した、との報道があった。
このニュースに多くの国民が祝福の声を上げた。
ただし祝福しながらも、ご進路の選び方にやや意外な印象を持った人も、専門家を含めて少なくなかったようだ。
これまで、内親王や女王の方々が大学院に進学されたり、海外に留学されたりする例は、珍しくなかったからだ。
大学生活で、敬宮殿下が勉学に熱心に打ち込んでおられるご様子がしばしば伝えられていた、という事情もある。
さらに、皇族という何かと窮屈なお立場にあって、比較的自由な空気に触れることができる貴重な学生生活の多くの時間が、コロナ禍のためにさまざまな制約の中に置かれてしまわれた。だから、何らかの形でもう少し学生として青春の日々を楽しまれてはいかがか、と願う国民もいたはずだ。
しかし、敬宮殿下はきっぱりと、日赤での嘱託勤務という進路を自ら主体的に選ばれた。
「人々や社会のお役に立つことができれば」
このような選択をされたご自身のお気持ちについては、宮内庁から以下のような発表があった。
「本年4月より日本赤十字社の嘱託職員として勤務することの内定をいただき、ありがたく思っております。日頃から関心を寄せている日赤の仕事に携われることを嬉しく思うと同時に、身の引き締まる思いがいたします。これからも様々な学びを続け、一社会人としての自覚をもって仕事に励むことで、微力ではございますが、少しでも人々や社会のお役に立つことができればと考えております」
ここにある「少しでも人々や社会のお役に立つことができれば」というお気持ちこそ、大学院への進学とか海外への留学という、より自由な環境が期待できる選択肢を除外された、最大の動機だろう。言い換えると、個人的な学問上の志望などよりも、早く人々や社会に貢献したいという、公共へのご献身を優先された結果にほかならない。