2月23日、天皇陛下は64歳を迎えられ、一般参賀が行われた。皇室研究家で神道学者の高森明勅さんは「東京では天皇誕生日としては珍しく、朝から雨が降り続いた。私も長女とともに一般参賀におもむいたが、お出ましの時刻が近づくと、参賀者は誰に言われるわけでもなく静かに傘を閉じていった。これは思いもよらぬ不思議な光景だった」という――。
天皇陛下の64歳の誕生日を祝う一般参賀で、手を振られる天皇・皇后両陛下と長女愛子さま。2024年2月23日午前、皇居・宮殿
写真=時事通信フォト
天皇陛下の64歳の誕生日を祝う一般参賀で、手を振られる天皇・皇后両陛下と長女愛子さま。2024年2月23日午前、皇居・宮殿

珍しい「雨の天皇誕生日」

2月23日は国民の祝日の1つ、「天皇誕生日」だった。天皇陛下はこの日、64歳になられた。

東京では天皇誕生日としては珍しく、朝から雨が降り続いた。

天皇誕生日には、国民が皇居に参入して天皇陛下に祝意を表す「一般参賀」が行われる。その際に雨が降った過去の例は、「宮内庁の古参職員に聞いても、記憶にないという」との報道があった(橋本寿史氏「FNNプライムオンライン」2月23日18:00配信)。

令和になって初めて一般参賀が行われたのは令和2年(2020年)の新年一般参賀だった。この時の参賀者の数は6万8710人。それ以降、コロナ禍による実施の見送りや、感染対策のために抽選による人数制限が続いた。今回はあいにくの雨だったが、久しぶりに本来の形で行われた。

今年の1月2日の新年一般参賀は、前日に発生した能登半島地震の深刻な被害に配慮された天皇陛下のお気持ちにより、急な中止が決まった。

天皇誕生日の一般参賀についても、陛下ご自身はやはり被災者の苦しみをお考えになって、新年と同様に中止という選択肢も想定されていたようだ。

中断や制限が続いた一般参賀

しかし、一般参賀は幅広い国民が皇居で直接、新年やお誕生日をお祝いする気持ちを伝えることができる、数少ない機会だ。宮内庁は国民の希望を踏まえて、天皇・皇后両陛下や皇族方に人々の祝意にお応えいただくため、わざわざお出ましをお願いしている。

それが令和になってしばらく中断したり、制限されたりしてきた。今年の新年もやむなく中止となった。

そうした事情を考えると、今回、天皇誕生日の一般参賀が本来の姿で実施されたことは、相次ぐ災害や経済の停滞などで何かと沈みがちな人々の気持ちを奮い立たせる、すぐれたご決断だった。

これは実際に参賀のために皇居まで足を運んだ人たちだけでなく、テレビ報道などの映像を通して、天皇・皇后両陛下や敬宮としのみや(愛子内親王)殿下をはじめ皇室の方々のお姿を拝見し、祝意に満ちた参賀の雰囲気に触れた多くの国民にとっても、おそらく同様ではないだろうか。