天皇・皇后両陛下の長女愛子さまが、今月学習院大学を卒業し、4月から日本赤十字社で嘱託職員として勤務する。神道学者で皇室研究家の高森明勅さんは「これまでのご本人の作文を拝見すると、平和への思いや、ご自身の天性のお優しさが読み取れ、『国民と苦楽を共にする』という皇室の伝統的精神を、ほかの誰よりも深く受け継いでおられることがよくわかる」という――。
人生の節目を迎える愛子さま
この春、天皇・皇后両陛下のご長女、敬宮(愛子内親王)殿下は人生の節目を迎えられる。学習院大学を卒業され、4月から日本赤十字社の嘱託職員として勤務に就かれることになるからだ。学生から社会人へという大きな節目だ。
ただし“嘱託”という勤務形態なのは、皇族としてのご公務を重視されているからにほかならない。つまり、学業を終えられて、皇族としてのご公務も本格化することを意味する。
そのような時期にあたり、敬宮殿下のこれまでの歩みを、ご本人の過去の作文を拝見しながら、振り返ってみたい。
広島で抱かれた平和への思い
今年の歌会始のお題は「和」だった。そこで皇后陛下がお詠みになった御歌は次の通り。
広島を
はじめて訪ひて
平和への
深き念ひを
吾子は綴れり
ここに「吾子」とあるのは、言うまでもなく敬宮殿下を指している。
敬宮殿下は学習院女子中等科3年生の時に、修学旅行として初めて広島を訪れられている。その際、原爆ドームや平和記念資料館の展示などをご覧になって、平和の大切さを肌で感じられた。そのご経験をもとに自らお考えを深められて、「世界の平和を願って」と題する作文を卒業文集(平成29年[2017年])にお書きになっている。
日頃から平和を強く願われている天皇・皇后両陛下におかれては、敬宮殿下が自発的に平和の尊さに思いをいたされ、ご自身のお言葉でその思いを表現されたことを、嬉しく頼もしく思われたことと拝察できる。この皇后陛下の御歌はそのお気持ちを詠まれたものにほかならない。「深き念ひ」という語に皇后陛下の共感が込められている。