日本のほとんどの会社には戦略がない
そして、ここでビジネスの現実をいっておくと、現状ではベンチャー企業も大企業も、日本のほとんどの会社には戦略がないに等しい。
いちばんの典型が、たとえば企業の「中期計画」なるものだ。これは、生産部門はコストを1割削減しましょう、商品開発部門は新商品の比率を2割アップさせましょう、営業部門は販促費を抑えて売上げの3割増を、などと書いてあり、それを足し合わせると、わが社の業績は今年からこういう上昇カーブを描いて伸びていきます、というものである。こういう部門別計画をただ足し合わせてつくった中期計画を、「ホッチキス中計」という。
もちろんこれを戦略とは呼べない。
ウチには中期計画がありますというのと、戦略がありますというのとは違うのだ。この種の中期計画は単にやりたいこと、やるべきことを足し合わせてつくっただけの「努力目標」にすぎず、戦略にはなっていないのである。
別の言い方をすれば、ウチは生産部門にはお金をかけないで、営業部門に徹底的にカネとヒトを投入して勝っていくんだ、という資源の傾斜配分、偏った資源配分をするのが戦略だといえる。
これまで日本の企業は何事にも平等が大好きで、とくに人事面などは頑なに「公平」ならぬ「平等」を旨としてきた。仕事の能力に明らかな差があっても、同期入社の人たちはまあだいたい同じペースで主任から係長、課長、部長と昇進していく。
いまだからこそ「戦略的思考のススメ」
もし、若い社員が主任から課長に二階級特進なんて抜擢人事があったとしたら、社内からは間違いなく「いくらアイツが会社を儲けさせているからって、あまりに不平等だ。許せん」と声が上がるだろう。
こういう企業風土だと、生産部門の予算を大幅に削って営業部門に回そうといった戦略的な発想は、あまり期待できない。
しかし時代は変わって、抜擢人事も当たり前に行われるようになっている。これまでの日本企業がどこか間違っていたのである。
経営戦略もこれと同じだ。説得力のある根拠とその説明は必要になるが、削減対象部門からの不平等だ不公平だ云々の声はあえて無視してでも、思い切った戦略的思考をしていくべきである。
それでこそ、会社を大きく儲けさせるために役立つ、すばらしい知恵も生まれてくることになる。