世界で活躍するために求められる能力とは何か。プレゼンアドバイザーの竹内明日香さんは「小学校低学年から英語の授業が始まっているが、英語力があれば世界で活躍できるわけではない。日本の教育は『話す力』を育てることに、もっと取り組むべきだ」という――。

※本稿は、竹内明日香『すべての子どもに「話す力」を』(英治出版)の一部を再編集したものです。

黒板と黒板消し
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

海外の現地校でいじめられ、頭に十円ハゲができた

私は話せない子でした。

母が骨髄炎で入退院を繰り返していたので、幼稚園のあいだも祖母や親せきの家に預けられ、苦手な食べ物を苦手と言い出せず、「明日はどこに行くのだろうか?」と毎日おびえて過ごしていました。

父の仕事の関係で、幼稚園の最終年から小学3年生まで海外にいました。

英語がしゃべれないのに現地校に入ったので、トイレに行くにもなんて言ったらよいかわからない。白人だけのクラスに有色人種は私ひとり。お弁当を見ては「臭い」と言われ、髪の毛が黒いことで何度もいじめられました。当時は「ジャップ」(日本人への蔑称べっしょう)や「リメンバー・パールハーバー」なんて言葉を普通にかけられた時代です。

ある日、頭に十円ハゲができていました。

こんな環境のなか、現地の教育で自己主張を鍛えられました。

「話せない子」はそれぞれに理由を抱えている

日本に帰国すると、今度はこの国では発信力が強すぎる子になっていました。手を挙げて発言するたびにクラスがシーン……とても痛い状況でした。日本語もあやしいから、「ガイジン」と言われていじめられて。

やがて、私はまた発信できない子になりました。

日本に帰ってきたのは小学3年生の終わりでしたが、6年生のときの成績表にはこう書かれました。

「良いことを言っていると思いますが、発表の声が小さくて聞こえません」

このような幼少期を過ごしたので、私には話せない子の気持ちがわかるのです。

ひとくくりに「おとなしい」とされるその子にも、決して主張がないわけではありません。話せない子はそれぞれに理由を抱えているのです。

各地の教育現場や家庭で見かけるそのような子たちに、「話す力」を授けるにはどうしたらよいか。「話す力」を育むことが、なぜいま大事なのか。

それがこの本のテーマです。