※本稿は、竹内明日香『すべての子どもに「話す力」を』(英治出版)の一部を再編集したものです。
海外の現地校でいじめられ、頭に十円ハゲができた
私は話せない子でした。
母が骨髄炎で入退院を繰り返していたので、幼稚園のあいだも祖母や親せきの家に預けられ、苦手な食べ物を苦手と言い出せず、「明日はどこに行くのだろうか?」と毎日おびえて過ごしていました。
父の仕事の関係で、幼稚園の最終年から小学3年生まで海外にいました。
英語がしゃべれないのに現地校に入ったので、トイレに行くにもなんて言ったらよいかわからない。白人だけのクラスに有色人種は私ひとり。お弁当を見ては「臭い」と言われ、髪の毛が黒いことで何度もいじめられました。当時は「ジャップ」(日本人への蔑称)や「リメンバー・パールハーバー」なんて言葉を普通にかけられた時代です。
ある日、頭に十円ハゲができていました。
こんな環境のなか、現地の教育で自己主張を鍛えられました。
「話せない子」はそれぞれに理由を抱えている
日本に帰国すると、今度はこの国では発信力が強すぎる子になっていました。手を挙げて発言するたびにクラスがシーン……とても痛い状況でした。日本語もあやしいから、「ガイジン」と言われていじめられて。
やがて、私はまた発信できない子になりました。
日本に帰ってきたのは小学3年生の終わりでしたが、6年生のときの成績表にはこう書かれました。
「良いことを言っていると思いますが、発表の声が小さくて聞こえません」
このような幼少期を過ごしたので、私には話せない子の気持ちがわかるのです。
ひとくくりに「おとなしい」とされるその子にも、決して主張がないわけではありません。話せない子はそれぞれに理由を抱えているのです。
各地の教育現場や家庭で見かけるそのような子たちに、「話す力」を授けるにはどうしたらよいか。「話す力」を育むことが、なぜいま大事なのか。
それがこの本のテーマです。