首都圏を中心に2015年以降、私立中高一貫校の受験生数は増加の一途だ。中学受験専門塾代表の矢野耕平さんは「学力レベルとして最も人数の多い偏差値50前後の子が挑む中堅校が、受験の過熱で難度が上昇しており、注意が必要だ」という――。
2023年度中学入試で起きた「中堅校の難化」は24年度も
都内・神奈川県の中学受験がスタートした2023年2月1日。その午前入試の受験者総数は4万3027人で前年より670人増加した。
首都圏の中学受験生は1月に始まる埼玉県や千葉県などの入試を受けたあと、2月1日午前、同日午後、2日午前、同日午後、3日午前、4日午前……と志望校の入試に挑んでいく。
この2023年度の首都圏中学入試では、模試の数値からは考えられない「波乱」が中堅校中心に見られた。
一例を紹介しよう。
まず、偏差値52の獨協中学校(東京都文京区/男子校)だ。2月1日午後入試はちょっと信じられない結果が見られた。同校より偏差値の高い学校を合格した子が軒並み不合格になったのだ。
例えば、1日午前の芝中学校(東京都港区/男子校/偏60)に合格した子。同午前の本郷中学校(東京都豊島区/男子校/偏60)に合格した子。同午前の桐朋中学校(東京都国立市/男子校/偏56)に合格した子。
偏差値で最大8も高いのに、落ちる……。まさかこれはわたしの塾だけのことではあるまいと、他塾の経営者にヒアリングしてみた。すると、獨協より偏差値が13も高い早稲田大学高等学院中学部(東京都練馬区/男子校/偏65)に合格した子が獨協の午後入試で土が付いたとのことだった。
この現象は獨協だけに起こったのではない。
三輪田学園(東京都千代田区/女子校)の1日午後入試(偏47)も一気に難度が上昇した。1日午前の田園調布学園(東京都世田谷区/女子校/偏52)に合格した子が不合格になった。
また、2日2日午前の青山学院中等部(東京都渋谷区/共学校/偏65)に合格した女の子が、同日午後の開智日本橋学園(東京都中央区/共学校/偏58)で不合格になってしまったのだ。