日本の小学校には根拠不明な謎のルールや指導法がたくさんある。現役小学校教員の松尾英明さんは「例えば、『各学年に配当されていない漢字は指導してはいけないし使ってもいけない』というもの。そのため、児童が小2までは『登校』を『とう校』と教員は交ぜ書きする。また、『漢字が書けないと将来困る』といった児童への指導法はウソの脅し文句と言える」という――。
※本稿は、松尾英明『不親切教師のススメ』(さくら社)の一部を再編集したものです。
児童が読めない漢字もばんばん板書している理由
学習指導要領には「学年別漢字配当表」が別表として記載されている。ここに記されている漢字については、当該学年のものを読めるようにし、前学年のものを書けるようにすることと定められている。要するに、全国どこでも指導の漏れ落ちがないようにという温かい配慮である。
これが拡大解釈されて、誤解されていることが結構ある。「学年に配当されていない漢字は指導してはいけないし使ってもいけない」という「謎ルール」である。学習指導要領が最低限の内容を示しているということを考えれば、その解釈が誤りであることは明確である。
加えて、学習指導要領中にも「当該学年以前の学年又は当該学年以降の学年において指導することもできる」と明言されていることなのだが、慣習的に「謎ルール」の方を頑なに信じている風潮が学校現場には未だに結構ある。
それを信じている教師たちは親切にも、簡単な熟語であってもわざわざ交ぜ書きで書く。例えば「登」は3年生の配当漢字であるため、2年生までは必ず「とう校」と書く。「道徳」という教科は1年生からあるにも関わらず、「徳」の字の配当が4年生であるため、黒板にも「道とく」と書き続け、子どもはそれを連絡帳にも同じように写して書く。道徳という言葉は「徳」という字そのものにこそ意味があり、この漢字を知らずして道徳の授業とは何なのかを子どもが理解するかどうかの方に疑問が残る(生きていく上で「得する道」だと思っていたという、教える側にとっては笑えない笑い話もある)。