「過去の転換率」を基準に行動目標の数字を設定する
では、この行動目標の数字は何を基準に設定すればいいのでしょうか。それが、「過去の転換率」になります。順を追って説明していきましょう。
最初はKGIである「受注件数」の12件のみがあります。仮に過去の「受注率(商談化のうち、何件が受注に至ったか)」が31%だったとしましょう。この場合、商談化の行動目標Xは「X×31%=5件」で、16件となります。
次に、過去の「商談化率(面談のうち、何件が商談化に至ったか)」が30%だったとしましょう。この場合、面談の行動目標Xは「X×30%=16件」で、54件となります。
このように、KGIである「受注件数」と「過去の転換率」から逆算して、それぞれのプロセスの行動目標を立てていくのです。
しかし、読者の皆さんは初めてこの数値化を実践しますから、そもそも「過去の転換率」を持ち合わせていません。その場合、まずは仮で各転換率を設定してしまって構いません。
皆さんも普段自分が行なっている業務ですから、それぞれの転換率が大体どのくらいかは何となく見当がつくと思います。
そして、まずはその仮の転換率と行動目標のもと、1カ月、2カ月と、行動目標に対する行動実績(それぞれの実際の行動の量)を記録してPDCAを回していきます。
そうすれば、各プロセスの実際の「行動の量」が出ますので、そこから自ずと正確な転換率を算出できるようになります。
行動目標も「高く」設定したほうがいい
続いて、人事の場合の例も、同じです。図表2を見てください。KGIである「採用人数」と「過去の転換率」から逆算して、それぞれのプロセスの行動目標を立てていくのです。
こちらも同じく「過去の転換率」の数字がなければ、まずは仮の転換率と行動目標を立ててください。数カ月、実績を記録していけば、正確な転換率が出てきますので、行動目標も精緻なものになっていくでしょう。
行動目標を設定する際の注意点としては、実際に必要な数よりも高めに設定をしておくことです。先にお話ししたのと同様で、人は目標の8~9割の達成率で終わることがほとんどだからです。
そして、そのためには、転換率を“低めに”設定することが大事になります。たとえば、営業の「アポ」から「面談」への転換率(面談率=アポの件数のうち、何件が面談に至ったか)を高めに設定してしまうと、少ない「アポ」でも多くの「面談」を獲得できることになってしまうため、必然的に「アポ」のプロセスの行動目標が減ってしまいます。
転換率は、過去と同じ行動をしていたら下がるくらいに見積もっておいたほうがいいのです。前年同月の転換率が97%であれば、今月の転換率は95%くらいに下げたほうが行動目標を高く持つことができます。
転換率を下げておくことは、「確率」という不確実性のリスクを軽減することになります。