健康診断の数値とはどう向き合うべきか。医師の和田秀樹さんは「糖尿病の状態を示すHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の基準値は長年6パーセントとされてきたが、2008年の大規模調査では7~7.9パーセントくらいに保ったほうがはるかに死亡率が低いという報告があった。ところが、糖尿病学会はこの5年後の2013年に初めて条件付きで新基準を採用した。日本はエビデンスより偉い医者たちの意見のほうが勝ってしまう恐ろしい国だから、ストレスになる健康診断は受けなくていい」という――。
※本稿は、和田秀樹『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。
エビデンスより偉い医者の意見が勝つ恐ろしい国・日本
かつて人間ドック学会が、血圧は収縮期(最大)血圧を147mmHg、拡張期(最小)血圧を94mmHgを高血圧の基準にするという基準案を出したことがあります。
これは彼らの150万人にもおよぶ調査データに基づくものですから、エビデンスに近いものです。
ところが途端に循環器内科や高血圧学会の偉い医者たちが「それでは、将来の心血管疾患や脳卒中、腎臓病の発症予防にならない」と激しく、その基準案を叩きました。
結局のところ、人間ドック学会は、収縮期血圧を130mmHg以上で軽度以上というように逆に基準を厳しくしてしまいました。
本書でこれまでも論じてきたように、高血圧学会も循環器の学会も大規模比較調査をしていないのです。
日本はエビデンスより偉い医者たちの意見のほうが勝ってしまうという、わたしにいわせれば恐ろしい国なのです。
では健康診断は必要ないというのか? と思う人もいることでしょう。
はい、そのとおり。健康診断には意味がないというのがわたしの持論です。
健康数値にエビデンスがない以上、「この数値では病気になりやすい」ということすらわからないわけで、個人差はまったく考慮されていません。
健康診断の場合、「そういえば頭痛がする」といった自覚症状はほとんどありません。
多くの人が健康診断の数値を見て「異常値なんだ」と知るわけです。
身体に不具合がなく、快適に暮らしているのに、この数値だと将来病気になると脅されて、薬を飲まされ、食事や酒を我慢させられる。
しかし、病気が増えるかどうかの調査は海外でなされたもので、日本人の体質は無視されています。