高齢者が服用すべき薬の量はどれくらいが適切か。医師の和田秀樹さんは「大学病院では研究業績を残さないと出世できないため、『異常値には薬を投与する』という信仰が蔓延している。しかし、老化にともない腎臓や臓器の働きが衰えている高齢者にとって通常量とされる薬の投与は大きなダメージになる。本来なら体型や体力、症状などを見合わせて薬を減らし、その人にとってのベストな薬の使いかたをすべきだ」という――。

※本稿は、和田秀樹『病気の壁』(興陽館)の一部を再編集したものです。

手のひらいっぱいに複数の薬をのせているシニアの手元
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医者が金儲けのために薬を出すというのは誤解

日本人が薬漬けになっているのは今に始まったことではありませんが、多くの人は医者が薬を出すと儲かるからだと認識しているのではないかと思います。

だから医者は収入が多いのだと。でもこれは誤解です。

かつて日本では老人医療費が無料になった時代がありました。

そのころはどこの病院も高齢者であふれかえり、待合室は高齢者のサロンと化していたと批判されました。

病院の待合室で旅行の計画を相談する高齢者のグループがいるとか、いつも来ている人が姿を見せないと「今日は具合でも悪くなったのかな?」と心配する声がある、などといった皮肉な話をよく耳にしました。

親が死んだあと、部屋の整理をしていたら、押し入れから大量の薬が出てきて驚いたといった話もあり、要するに医者が病気でもない高齢者を集めて、金儲けをしていると揶揄されていたわけです。

現実的に考えれば、高齢者は高血圧や骨粗しょう症など慢性的な病を抱えて医者に来ることが多く、風邪をひいたといった急性の病気で来ることは珍しいといえるでしょう。

そう考えれば待合室で旅行の計画を立てるグループがいても不思議ではないのです。

前述のように待合室の患者さんが元気だということは、その医者が名医である可能性が高いのです。

ところがマスコミは、日本の医者は病気でもない高齢者を集めて薬を出して金儲けをしていると考え、厚生省(現・厚生労働省)も医療費を減らしたいという思惑で、無知なマスコミを上手にあおって、90年代後半から医薬分業を押し進めました。

つまり薬の処方は医師、調剤は薬剤師と専門家がそれぞれに分担するシステムに変えていった。薬を出せば出すほど儲かるのは院外薬局の経営者と製薬会社です。

ところが医者に入るのは処方箋料のみとなったにもかかわらず処方の数は減りませんでした。このことは医者が金儲けのために薬を出していたのではないことを意味します。