高齢者が若い人ではベストな薬の量が違う

薬を口から飲んだ場合、胃腸で吸収されてから少し遅れたころに血中濃度がピークに達します。

その後、肝臓で分解され、腎臓で排出されるのを経て、少しずつ血中濃度が下がっていくのですが、濃度が半分くらいまで下がったところで次の薬を飲むという繰り返しで、血中の濃度がほぼ一定に保たれるというのが原則です。

薬によって飲みかたに違いがあるのは、血中の濃度が半減する時間が薬によって異なるからです。

8時間かかる薬なら1日に3回の服用、12時間であれば1日に2回の服用となります。

ここで問題なのは腎臓や肝臓の働きが衰えている高齢者の場合には、薬を肝臓で分解するにしても、腎臓で排出するにしても、若い人より時間がかかるという点です。

高齢者が若い人と同じ量の薬を飲めば負担がかかるのはあたりまえなのに、現状では子どもと大人によって薬の量を変えても、大人と高齢者という区わけはありません。

本来なら体型や体力、症状などを見合わせて薬を減らし、その人にとってのベストな薬の使いかたをすべきなのです。

曜日ごとに分かれたピルケース
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なぜ男性の平均寿命は女性の平均寿命より短いのか?

どうすればわたしたちは無駄な薬を飲まないようにできるのか? と問われたら、わたしはひとりひとりが薬の弊害について熟考し、自分なりの考えをもって、薬を使いたがる医療体制と対峙たいじしていくしかないでしょうと答えます。

もっと具体的にいえば、こういう現象はなぜ起こるのだろうか? と考えてみることです。

たとえば、なぜ男性の平均寿命は女性の平均寿命より短いのかと思いをめぐらせてみる。すると薬の問題が潜んでいることがわかります。

この国では、男性は社会のなかで仕事をして、女性は家を守るという専業主婦が主流の時代が続きました。

現在、80代になる人たちのなかで健康診断を毎年受けていたのは主に男性。専業主婦やパート従業員が主だった女性は会社の定期検診を受けていないのです。

本来なら身体の異常にいち早く気づき、数値を正常値に戻してきた男性のほうが健康管理がなされており、長生きをしてしかるべきなのにそうなっていません。

日本人の平均寿命が50歳を超えた当時、男女の平均寿命は3〜4歳しか差がありませんでした。

現在では、6歳の差があります。健康診断が寿命をのばすならむしろ逆転してしかるべきなのに、差が広がっているのです。