※本稿は、寝子『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
※本稿で出てくる事例は、実際のケースにヒントを得て再構成したもので、特定のケースとは無関係です。
親子ならではの激しい衝突は「甘え」があるから
親との関わりで大きなストレスになることの1つに、「ケンカになってしまう」「酷いことを言ってしまう」という他人との間には生じない激しい衝突があります。
酷い言葉を投げつけてしまったり、あちらから怒りをぶつけられてしまったり、決して他人には言わないような言葉や態度が出てしまいます。
親子ならではの激しい衝突は、良い意味でも根本的に「甘え」があるからでしょう。家族以外に出さないのは、他人に同じ言動をしたら許されないからで、相手が親、あるいは子どもであれば、許してもらえるとどこかで感じているからだと思います。
その意味では、酷い言動のすべてがネガティブなわけではなく、親子ならではの「甘え」と「信頼」「絆」があるからこそかもしれないという側面も意識していけたら、負の感情の軽減の一助になるかもしれません。
しかしながら、酷い言動は、言われた側は親も子も関係なく傷つきます。言った側もスッキリしたと思えることはほとんどなく、かえって後味が悪く、何日も引きずってしまうほどの自己嫌悪感や不快感となってしまいますよね。
さらに、自分でも「どうして言いたくないことを言ってしまうのか」わからず、わからないからまた繰り返してしまいます。
このように不必要に傷つけあうことを防ぐために、言動がエスカレートしてしまう理由を整理していきます。
お互いに「わかってほしい」からヒートアップする
親側も子ども側も言い合いになってケンカをしてしまう場合は、まずお互いが相手を理解しようと思う気持ちよりも、“自分の主張をわかってほしい”という気持ちのほうが勝っている状態のときに生じます。
これは親子ゲンカに限らず、夫婦間など特に近しい間柄で認められます。
お互いに“自分のことをわかってほしい”と強く相手に求めていて、相手の言い分を聞く心境ではありません。そのため、お互いに「わかってくれない」思いを強めて、お互いが不満を募らせ、「なんとか相手にわからせないと」とヒートアップしていってしまうのです。
さらに、親子関係に焦点を当てると、子ども側は親に対して「親なのだからわかってくれるはず」という期待を抱き、親側は子どもに対して「もう大きくなったんだから親の気持ちをわかってくれてもいいでしょ」という期待を抱いています。
つまり、お互いに「こう対応してほしい」と、自分の中での相手がとるべき「正解」を暗に求めてしまっているところがあるように感じます。
だからこそ、相手の対応が自分の納得するものではなかったときのガッカリ感は深くなり、「できるはずなのに」と怒りになってしまうのかもしれません。