対人関係で苦しい感情を抱くことがあったら、その原因は親子関係にあるかもしれない。心理カウンセラーの寝子さんは「ある心境や状況になったとき、過去の似た状況時に生じた反応が起きることがある。友人やパートナーなど、特別親しい人に対して、子どものときに親に感じた怒りや不信感が生じることがあるのだ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、寝子『「親がしんどい」を解きほぐす』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
※本稿で出てくる事例は、実際のケースにヒントを得て再構成したもので、特定のケースとは無関係です。

パートナーのイメージ
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

「親に感じた怒りや不安」が生じる心理作用

親との間に起きた複数の感情が対人関係に及ぼす影響について触れたいと思います。

私たちの心身の反応の中には、ある心境や状況になったとき、過去の似た状況時に生じた反応が伴うという心理作用があります。

たとえば、「親がいついなくなるかわからない」という不安を常に抱いていたら、大人になってから築いた対人関係で、大事な人に「見捨てられるのではないか」という不安が強く感じられ、気持ちの不安定さに悩むことがあります。

子どものころの親子関係に近い、特別な関係である相手に対して、「好意」と共に「恐怖心」や「怒り」「不安」が喚起されるという心理作用です。

友人やパートナー、配偶者といった特別に親しい人に対して、子どものときに親に感じた怒りや不信感などが同時に生じることがポイントになります。

もし、そのような特別に親しい人に対して、うまく説明のつかない強い不安や怒りが生じることがあったら、その由来は“過去”であり、今のご自身やパートナーのせいではないと捉えてみることが必要です。

「人の機嫌を取ること」にエネルギーを費やしてしまう

対人関係で苦しい感情を抱くことがあったら、「子どものころに手当てができなかった心の傷が、“手当てしてほしい”と訴えているのかもしれない」と受け止めてみましょう。

今は大人になったご自身が子どものころの自分を癒すイメージを持てると、今の心の状態を少し俯瞰ふかんできるようになります。そうすると、強い感情に圧倒され過ぎずに付き合っていけるようになることがあります。

幼少期の親との関係で傷ついたり不安になったりすることが多かった場合、「親密な対人関係は危険を伴うもの」と学習され、親以外の他者との関わりに苦しみを伴ってしまうことがあります。

この学習が、大人になってから対人関係で苦しみを生じさせる代表的なものとして、関わると傷つくような人ほど気になって、機嫌を取ることにエネルギーを費やしてしまうことが挙げられます。

子どものころ、少なからず「一番親しい人は傷つけてくる人」という体験をしたら、それは「人との関わりは危険でもある」と刻まれても無理もないことです。同時に、危険を未然に防ごうと、常に誰かの機嫌をうかがうようになったとしてもおかしくありません。

そうすることで、懸命にご自身を守ってきたのだと思います。