熟年離婚した夫婦では、男性の幸福度は下がる一方、女性の幸福度は上がることが知られている。その背景にはなにがあるのか。前野隆司さんと菅原育子さんの共著『「老年幸福学」研究が教える 60歳から幸せが続く人の共通点』(青春新書インテリジェンス)より、一部を紹介する――。
妻を責める夫
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離婚した人は未婚者よりも幸福度が低い

「結婚は人生の墓場」という表現があります。これを聞いただけで、結婚したくなくなる人もいそうです。しかし、調査結果によると、日本でもアメリカでも、どこの国でも、未婚の人よりも結婚している人のほうが幸福度が高い傾向があります。

実は、「結婚は人生の墓場」というフランスの詩人ボードレールの言葉は、もともとの意味を誤訳して伝わったもので、けっして「結婚してもろくなことがない」という意味ではないそうです。出典については諸説ありますが、本来は、「遊んでばかりいないできちんと結婚しなさい。(人生を締めくくる場所である)墓のある教会で」という意味の言葉だったというのが定説のようです。

もちろん、結婚生活のような話は個人差が大きいので、データに一喜一憂する必要はありません。結婚しているほうが幸せと聞いて、「じゃあ、早く結婚しなくては」とあせったり、「離婚しちゃいけないんだ」と必要以上に我慢したりする必要もありません。未婚でも離婚していても幸せな人はいくらでもいます。大切なのは考え方と生き方です。

日本人1500人を対象にして私(前野)が行った調査では、離婚した人の幸福度は未婚の人よりも低い傾向があることがわかりました。一方で、配偶者と死別した人の幸福度は、結婚している人の幸福度と有意な差がありませんでした。死別は寂しいけれども、いい伴侶がいたという思い出があることで、平均するとそこそこ幸福度が高いのでしょう。