死別の場合、男性のほうがダメージが大きい
若い人の場合は、男性のほうが再婚率が高いので、一度離婚しても再婚すれば幸福度が再上昇します。しかし、高齢になって離婚した人は、現状では再婚しない傾向が高いので、その点からも高齢男性の離婚ダメージは回復しにくいのでしょう。
離婚に比べると、すでに述べたように、死別のほうが幸福度はそれほど下がりません。もちろん、死別直後はガクンと下がりますが、「コーピング」といってストレスに対処しようとする心理的な作用が働き、伴侶を失った悲しみが、いつしか伴侶に対する感謝に変わっていきます。その結果、人にもよりますが、半年から3年くらいで幸福度は元に戻るといわれています。
ただし、ここにも男女差がかなりあり、3年後には女性は比較的回復するのに対して、男性は抑うつ状態にとどまるケースが少なくないようです。123の研究をもとにまとめたメタ分析によれば、配偶者と死別後3年以内に死亡する可能性が、男性は1.27倍、女性は1.15倍と、男性のほうが高いというデータがあります。また、死別した年齢が若いほど男性のリスクは高いのですが、高齢になると男女差は小さくなっていきます(*4)。
(*4)Shor E., Roelfs, DJ., Curreli, M., Clemow, L., Burg, MM., & Schwartz, JE. (2012) Widowhood and mortality: A meta-analysis and meta-regression. Demography, 49(2), 575-606.
悲しみに効果的なのが「配慮できる友人」の存在
私(菅原)は、配偶者を亡くされた方のインタビューをしたことがありますが、複数の方が、死別後の悲しみからの回復に有効だったのは、友人からの誘いだったと話していました。
「しばらくはそっとしておいてくれて、そろそろいいかなというタイミングで誘ってくれたのが、とてもありがたかった」とおっしゃっていました。そういう配慮ができる友人がいたことで社会復帰ができて、回復につながったのでしょう。
手を差し伸べる友人の側からすると、声をかけるタイミングを見計らうのは高度な技術だと思います。逆にいえば、そうした心のひだを理解してくれる友人を持つこともまた、幸せに生きるための大切な要素です。昔からの仲間が3、4人いて、「そろそろ声をかけてみようか?」と提案してくれるような人間関係をつくっておきたいものです。