本当のことを白状させることに意味はない
子どもが嘘をつくとき、わたしたちはたいてい、反抗的だとか、ずるがしこいといった「悪い子になってしまった」解釈に飛びついてしまいます。でも、それでは大切なことを見逃がしてしまいます。子どもと敵対することになり、親子の権力争いに陥ってしまいます。この争いでは、誰も勝者にはなりません。
実際には、嘘をつくことは、反抗やずるがしこさとはまったく関係がありません。この本で取り上げているほかの行動と同様に、嘘をつくことは、子どもの基本的な欲求や、アタッチメントの意識と関係していて、誰かを思い通りに動かそうとしたり、だまそうとしたりしているわけではないことがほとんどです。
だからといって、嘘をついた子どもを見逃してやるべきだと言っているのではありません。わたしのアプローチは、嘘をつかせている中心的な動機は何かを探り、それに正面から対処して、本当のことを言いやすい環境を作ります。
理解できない行動を変えることはできません。また、罰、脅し、怒りは、理解や変化を促す環境とは相いれません。本当のことの告白を無理強いしても意味がないのです。
子供が親にウソをつく理由
子どもが嘘をつく理由はいくつかあります。まず、大人とはちがって、子どもはまだ空想と現実の境目があいまいです。子どもはしょっちゅうごっこ遊びをしますが、そこでは現実の法則にしばられることなく、さまざまな世界に入りこみ、さまざまなキャラクターになりきります。たとえば、あなたが子どもに、ランプを割ったかどうかきいたとします。
子どもがランプにつまずいて倒したことを、あなたがよく知っていたとしても、子どもは「ううん、わたしは自分の部屋で遊んでいたよ」と答えます。このとき、子どもは罪悪感に立ち向かっているのかもしれないし、親をがっかりさせたり怒らせたりしたくないという思いから、空想の世界に逃げこんでいるのかもしれません。
ここで、2通りの見方ができます。一つは、子どもが「真実を伝えるのを避けている」とする見方。もう一つは、真実を伝えるのがとても難しくて怖いから、空想の世界に入っているという見方です。そこは自分で制御でき、自分にとってより心地よい結末を勝手に決められる世界です。