きょうだい喧嘩が起きた時、親は子供に何と声を掛ければいいのか。コロンビア大で博士号を取り、3児の母でもあるベッキー・ケネディ博士は「『お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから我慢しなさい』のようにどちらかを悪者扱いするようなことは言わないほうがいい」という。ニューヨーク・タイムズのベストセラー第1位となった著書『GOOD INSIDE 子どもにとってよい子育て』(東洋館出版社)より一部を紹介する――。
砂場でおもちゃを取り合って喧嘩をする姉妹
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きょうだいげんかは「子供の不安」の表れ

なぜきょうだいは、いつもけんかばかりしているのでしょうか。エレイン・マズリッシュとアデル・フェイバの共著で、わたしが愛読している『憎しみの残らないきょうだいゲンカの対処法:子どもを育てる心理学』(邦訳・騎虎書房)に、こんな例えがあります。

あなたのパートナーが、知らない人を家に連れて来て、これからは3人で仲よく暮らそうと言ったら、どう思いますか? きょうだいが増えた子どもは、それに近い感情を抱くそうです。

年長の子どもの場合、きょうだいができると、アタッチメント(愛着)の欲求と、捨てられることへの恐怖が活性化されます。アタッチメントのレンズを通して見たとき、子どもは常に、自分が安全かどうかを見極めようとしています。

「ぼくの欲求は満たされる? ぼくは見てもらっていて、ありのままの自分を愛してもらっていて、自分だけの特徴や興味や好きなことや自分らしさを受けいれてもらっている? ぼくは家族から、内側はよい子どもとして見られている?」

きょうだいとけんかするとき、子どもは親に、自分が不安なこと、家族の中で安心を感じたいという基本的欲求をきょうだいが脅かしていると感じていることを「伝えて」いるのです。

きょうだいがいる以上、親の関心を分け合うことは避けられません。分け合う難しさは消えませんが、「対処しやすくする」ことはできます。そのためには、子どもがきょうだいについてさまざまな感情を抱くことを、親が受けいれる必要があります。

きょうだいの関係は思っている以上に複雑

多くの親は、よくある、しかし非現実的な言説にしがみつこうとします。「きょうだい仲よく!」とか、「きょうだいがいないと寂しいでしょう」などなど。ここでわたしは、2人以上の子どもを持つのはお勧めしないだとか、きょうだいは敵対するのがふつうだとか、お互いに意地悪するはずだと言っているのではありません。

わたしが言おうとしているのは、きょうだいの関係は複雑で、その複雑さをきちんと受けいれることで、わたしたちは子どもがさまざまな感情に耐えられるよう準備させることができ、子どもは感情をもっとうまく調整できるようになるということです。

それができるようになれば、感情が行動(悪口を言ったり、たたいたり、けなしたり)という形であふれることはなくなります。これこそ、わたしたちのゴールです。