「自分はよい子どもである」という思いがウソを呼ぶ

子どもの願い(制御を取り戻して結末を変えたい)という枠組みで嘘を見てみると、親にどのような影響を与えるかではなく、子どもが安心を感じて、自分が内側ではよい子どもだと思いたいというサインとして嘘を理解できるようになります。

この願いこそ、常に子どもを突き動かしている欲求です。子どもは、自分は親から愛すべき価値のある存在だと思われていないと考えると、自分がまだよい存在である空想の世界に逃げこみます。

親にランプを割ったかどうかきかれたとき、おそらく、子どもの頭に最初に浮かんだのは、こんなことでしょう。「ランプが割れなければよかった。ランプのそばで遊ばなければよかった。自分の部屋で遊んでいればよかった」。これらの願いが、「わたしは自分の部屋で遊んでいたよ」という言葉として表面に浮上します。

この言葉を「嘘」ととらえて、「嘘をつかないで!」と反応すると、表面下で起きている大切なことを見逃すことになります。

ウソは子供にとって自己防衛の一種

子どもは、真実を言うことが親とのアタッチメントを脅かすと思ったときにも、嘘をつきます。アタッチメントとは、親密さのシステムです。文字通り、養育者の近くにいることであり、養育者が自分の近くにいたいと思っていると感じることです。子どもは、このことをふまえて、常に親との関係性をモニタリングしています。そして、こう考えます。

「これからママ/パパに言おうとしていることは、ママ/パパをわたしから遠ざける? それとも、近くにいてつながっていられるようにする?」。もし、親が子どもの行動を「悪い子になってしまった(=内側も悪い子)」というレンズを通して解釈しつづけると、子どもは親が自分を遠ざけると予想し、毎回嘘をつくでしょう。

公園のベンチに1人で座る少年
写真=iStock.com/BrianAJackson
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結局のところ、人間の体は、捨てられることから自分を守るようにできています。つまり、悪い子だと思われること(「いまはあなたと話したくない、部屋に行きなさい!」とか「親に面と向かって嘘をつくなんて、おかしいよ」)は、子どもにとって最大の脅威です。

わたしたちが嘘だと思い、嘘だとラベルを貼っている行為は、往々にして、子どもの体が自分を守ろうとしている行為であり、人を「思い通りに動かそう」とするどころか、自己防衛の一種にすぎないのです。