文章題ができるように…生きた知識を家庭で育てる方法

これまで見てきたように、文章題ができない原因は、言葉が「生きた知識」になっていないこと。また、解答の筋道を立てたり文章に書かれていない部分を補ったりする「推論」の力が足りないことです。

では、そうした言葉の力と考える力を身につけるために、家庭でできることはあるでしょうか。

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生きた知識や推論する力は多様で豊富な経験をするなかで身につきます。

まずは家庭の日常での言葉を教科書の言葉とつなげてやることが有効でしょう。「誕生日は3日後だよ」「今、時速30kmだね」「それは1.5倍だね」などと、毎日の会話で意識して使うようにするのです。

ただし、くれぐれも、学校の授業のように教え込もうとはしないでください。数字や単位を嫌いになってしまっては元も子もありません。

家庭環境の学力への影響を調べた研究でも、家庭が言葉や数字に興味・関心を持つ環境であることが有効だとわかっています。さらに、親が言葉や数字を「教える」よりも、子供が自分で気がつく環境であることとより強い相関関係がありました。

テストの文章題を解くときだけ、大人から見ると「どうして?」と思うような読み間違いをしてしまうのは、“問題を解く必然性がないし、楽しくもない”から本来の能力が働かないのだと思うのです。

楽しむという意味では、たとえば親子で一緒に料理をすることなどがいいでしょう。

レシピサイトに載っている4人分の材料をわが家の3人分にするだけでも、高度な算数が必要です。おいしい料理のためなら、計算する気になるかもしれません。

スポーツが好きな子なら、打率や防御率などの数字に興味を持つでしょう。大谷翔平選手の打率が3割9分などという割合の数字も、好きなことなら面白いはずです。

どちらも、数字の二つの意味のうち、「モノを数える数字」だけではなく、高学年で習いつまずきやすい「割合としての数字」に触れる機会になります。

数字に慣れる経験という意味では、トランプ遊びなどもおすすめです。

気をつけたいのは、大人にとっては当たり前の「数字」や「単位」は、子供にとってはかなり難しいものだということ。間違いを指摘したり直したりすることよりも、経験を増やしてやる環境を意識してください。

1年生なら数を数えることも結構、難しい。「早く100まで数えられるようにしなくちゃ」などと焦るのではなく、まずは感覚的に数や量を把握できることが大切です。

ままごとやお店やさんごっこなどの遊びには、モノを数える作業がたくさんあります。公園で花びらの数を数えるだけでも、子供はそれを遊びと思い、楽しみながら数の数え方を覚えていきますよ。

【日常会話で数字・単位を使おう】

① 「ケーキをみんなで分けよう」
→「ケーキを3人で分けよう。1人分は3分の1になるね」

② 「もうすぐクリスマスだね」
→「クリスマスまであと12日だね」

③ 「早く出ないと遅刻しちゃうよ」
→「あと何分後に出れば7時46分の電車に間に合うかな?」

④ 〈野球が好きな子なら〉
「大谷選手は打率3割9分だよ!」
「それって、100打数のうち何回ヒットを打ったってことかな?」

⑤ 〈料理で楽しく割合に触れる〉
ホットケーキの材料(4人分)
小麦粉 100g
ベーキングパウダー 4g
砂糖 20g
……
「わが家で3人分をつくるには、小麦粉は何gにすればいいかな。小麦粉が4人で100gということは、1人何g? この袋に入っている粉で足りるかな? 買い足さないといけないかな?」

教える人 今井むつみさん
慶應義塾大学環境情報学部教授。著書に『親子で育てる ことば力と思考力』『ことばの発達の謎を解く』『学びとは何か』、共著に『算数文章題が解けない子どもたち』など。
(構成=プレジデントFamily編集部)
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