頭を抱えるチャイナタウンの料理人たち

しかしながら、ガスコンロには、ほかの調理法では出せない利点がある。強力な火力だ。サンフランシスコ・クロニクル紙は、サンフランシスコ市街のチャイナタウンに構える人気店「チャイナ・ライブ」を取材している。

強い火力で料理をする人
写真=iStock.com/Zian
※写真はイメージです

明るい店内に面した同店のオープンキッチンでは、4台の強力なガスバーナーが中華鍋を熱している。メニューの4割がこれらの鍋を通るほど、この店では重要な役割を担う。ガスコンロ禁止の政策は、シェフたちの頭痛の種だ。

オーナー料理長のジョージ・チェン氏は、禁止の理由はよく理解できると認めながらも、料理文化を消滅させかねないと危機感を募らせる。中華料理やアジアの料理は、時間をかけてカリフォルニアでも定着してきた。チェン氏は、「なぜ失いたいと考えるのでしょうか。私には理解できません」と憤る。

ガスコンロの規制は新築物件に適用されるため、チェン氏の店がすぐに影響を受けることはない。それでも、火力あっての中華料理のシェフたちは、将来への強い不安を禁じ得ないようだ。

一般の家庭でも、強い火力でパラッと炒めたいシーンは引き続き存在する。論文責任著者のジャクソン教授は、ガスコンロを引き続き使う場合、積極的に窓を開け放つよう勧めている。換気扇だけでは空気中のベンゼン濃度が十分に下がりきらないことがあるため、窓の開放が重要だという。

窓をしっかり開けて換気をしよう

親しんできたガスコンロが危険視される風潮には、戸惑いを禁じ得ない。しかし、コンロに限らず、身の回りの安全基準は年を経るごとに見直されてきた。数十年前であれば常識だった光景のなかにも、現在の感覚で振り返れば危険や不衛生だったものごとは数多い。ガスコンロも、かつて使われていた物珍しい品のひとつになるのかもしれない。

とはいえ、現時点で直ちにガスコンロの使用をやめることは難しい。また、今回の研究の結果に過剰反応する必要もないだろう。健康への影響を数値化したひとつの例として、冷静に受け止めることが大切だろう。

例えば暑い日には冷房を効かせ、窓を閉め切ったまま調理したい場面も多い。調理中と直後だけでも窓を開けて換気に配慮することで、有害なベンゼンを吸い込むリスクは抑制できると論文でも指摘されている。

身近に潜んでいた知られざるリスクのひとつとして、心の片隅にとどめておきたい。

【関連記事】
「10万人の胃腸を診た専門医が警鐘」日本人の約5割が毎朝食べている胃腸に最悪の"ある食べ物"
「人工甘味料は体に悪い」は盛られすぎている…「アスパルテームの発がん性報告」に現役医師が訴えたいこと
バカほど「タバコは絶対ダメ」と言いたがる…和田秀樹「本質を見抜ける人、そうでない人の決定的な差」
これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと
「精神科医が見ればすぐにわかる」"毒親"ぶりが表れる診察室での"ある様子"