人工甘味料は体に悪いのだろうか。医師の大脇幸志郎さんは「WHOがガイドラインを改訂し、人工甘味料を非推奨としたが、あくまで条件付きでしかなく、現段階ではエビデンスが不足している。たくさんある医療情報を信じてもろくなことはない。好きなら買う、嫌いなら買わない、という程度でいい」という――。

「アスパルテームの発がん性」報道とWHOのガイドライン

人工甘味料「アスパルテーム」の発がん性が、国際がん研究機関(IARC)のモノグラフに掲載される予定と報じられました。身近にある人工甘味料が実は「発がん性物質」だったと言われるとびっくりしていまいますね。人工甘味料を使った製品は買わないほうがいいのでしょうか?

考えかたは人それぞれですが、食品と健康についての本を数冊書いてきた筆者としては、気にしなくていいと思います。

「マテ茶」「非常に熱い飲み物」「夜勤」なども含まれている
写真=iStock.com/RHJ
「マテ茶」「非常に熱い飲み物」「夜勤」なども含まれている(※写真はイメージです)

第一に、IARCのモノグラフはきわめて幅広いことで有名です。掲載項目の目次だけで34ページもあります。その中には「マテ茶」「非常に熱い飲み物」「夜勤」なども含まれています。データがあれば載せるという編集方針であり、発がん性が強いか弱いかは区別していないのです。

モノグラフの信頼性に疑問

第二に、モノグラフの信頼性に疑問を呈する声もあります。2018年には「赤肉」「加工肉」という項目が追加されたことで話題になりましたが、翌年には世界的に信頼されている医学誌『Annals of Internal Medicine』に赤肉・加工肉とも「現在の消費を続ける」とした推奨が掲載され、論争が起こりました。こちらは「エビデンスに基づく医学」という言葉を作ったゴードン・ガイアットも著者のひとりです。

モノグラフの評価の内容は、この記事の執筆時点では未公開です。そのため詳細を議論することはできませんが、この5月に話題になった世界保健機関(WHO)のガイドラインと共通の論点がいくつか当てはまるだろうと思います。そこで以下では主にWHOのガイドラインを例に説明します。