「夕食の調理法にまで口を出すべきでない」という異論も

ガスコンロの禁止は行きすぎだとする異論もある。カリフォルニア州バークレー市議会は2019年、新築物件を対象に、天然ガス設備の導入をほぼ全面的に禁止する条例を可決した。全米でも初の試みで、現在までに数十の都市が追随している。

だが、カリフォルニア州レストラン協会などが規制に反発している。AP通信によると連邦控訴裁判所は今年4月、バークレーの条例を覆す裁定を下した。連邦法は家庭におけるエネルギー規制の決定権は連邦政府にあると定めており、控訴裁は条例がこれに違反すると判断した。市側は上訴する見込みだ。

米政治専門紙のヒルは今年7月、ガスコンロ禁止をめぐる賛否の議論が連邦議会でも白熱していると報じている。米消費者製品安全委員会がガスコンロの禁止を推進しているが、これを阻止する文言が「金融サービスおよび一般政府」の資金調達法案に盛り込まれた。

修正案を提出した米民主党議員は、「ワシントンの官僚たちはいい加減に度を超えた行いを改め、アメリカの家庭に夕食の調理法を指図するようなことはやめるべきだ」と述べ、ガスコンロの規制は行きすぎた政策であると訴えている。

開いた窓
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家庭で取れる対応手段はあるのか

高濃度のベンゼンが健康被害をもたらすことは、以前から知られてきた。しかし、元腫瘍学者のジャン・キルシュ博士は、従来よりも低い濃度のベンゼンによる被害がこのところ注目されていると説明している。彼女はサイエンティフィック・アメリカン誌に対し、「工業の世界で浴びるような量ではない比較的低い量でさえ、有害な結果をもたらすとの情報が続々と上がってくるようになりました」と語る。

家庭用コンロが有害物質の発生源であるとするならば、料理をする一般的な家庭に動揺が広がりかねない。キルシュ氏は、いたずらに不安をあおろうとしているわけではないとも補足している。「パニックを起こす意図はありません。リスクがあるのならば、それを低減したいということなのです」。

家庭では、どのような対策が取れるだろうか。調理器具にはさまざまなメリットやデメリットがあるが、ことベンゼンの吸入予防という観点では、ガスコンロ以外の選択肢を視野に入れると良いようだ。論文責任著者のジャクソン教授は、IH調理器、スロークッカー、オーブントースターなど、電気による調理器具が使える場面ではそちらを使うよう提言している。