みんなにバカなときと賢いときがある

【和田】最近、わたしが主張しているのは、バカな人と賢い人がいるのではなく、みんなにバカなときと賢いときがあるということ。バカなときが少ない人ほど、やはり人生はうまくいくし、最終的に賢く生きられる。長いスパンで見ると、やはりバカなときを減らしておいたほうが賢くいられると思うのです。

【橘】たしかに、長期では複利効果が利いてきますからね。少しずつでも正しい判断を積み重ねていくと、人生は生きやすくなってくる。逆に間違った判断を続けていると、いずれ挽回できなくなってしまう。

【和田】わたしが自分の成長エネルギーにしていることのひとつに「バカへの恐怖」があります。バカになりたくない、バカと思われたくないという。進歩のない人間、自己反省や自己改造ができない人間にはなりたくないんですね。

和田秀樹『前頭葉バカ社会』(アチーブメント出版)
和田秀樹『前頭葉バカ社会』(アチーブメント出版)

たとえば、東大を首席で卒業した人が会社に入ってみたら、適応力がなくてダメ社員の烙印を押され、上司から「勉強ができるからって何でもできるわけじゃないって気づけよ」とか「営業は足で稼ぐもんだ」とか説教されたとき、「あの上司はバカだ」なんて見切ってしまうと、もう自分を変えられない。でも、実際は会社で一番出来の悪い営業マンなのだから、置かれている状況を謙虚に受け止めたほうがいいよ、と思うわけです。

だから、自分がバカになってないかどうかはつねにチェックしますね。わたしはわりと感情的な人間なもので、ついカッとなって相手を批判しがちですが、ふとわれに返って「他の可能性もあるよな」「この人にも立場があるわけだし」と考えるようにしています(笑)。その点、橘さんは冷静でしょう。

【橘】自分も含めて「人間なんてこんなもの」「それを前提に生きていくしかない」という、あきらめのようなものがあるかもしれないですね。わたしたちが求めているのは、賢く生きることではなく、「幸せになること」じゃないですか。だからバカでも幸せになれるなら、人それぞれだし、それでいいと思います。

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