実は押尾さんも、モモエリさん同様、水商売の経験がある。現役時代は店のナンバーワンで、静岡では有名な売れっ子クラブ嬢だった。そのため、人はどんなシーンで腹を立て、喜ぶかも心得ている。水商売の経験も、下着ショップで培った販売経験と同じように役立っているという。たとえば、モエリーのドレスは他のショップと比べて決して安くはない。むしろ高めの値段設定だ。それでもここまで売れるのには、やはり理由がある。

「モエリーのお客様の多くは水商売。『ほかの子より少しでもかわいく見せたい』という思いで誕生日などに奮発して注文する。モエリーで買うこと自体をステータスだと感じてくださっているんです」

その気持ちに応えるため、モエリーの商品はすべて花柄のかわいらしい梱包で届ける。明細書も雑に扱わず1枚でもクリアファイルに入れる。小さなことだが、これが顧客の求める特別感を満足させ、また買ってしまう。

誰よりもトークが得意な押尾さんは、今日も黙って画面の向こう側の顧客と向き合っている。

「決めトーク」は
たまにアンテナショップの店頭に立つときは「おねえ言葉・おばさん・方言」を取り混ぜて接客。年上の立場で、自分をネタにして、ベタな褒め殺しをするのだ。方言をまじえれば親近感も倍増。

自己啓発の仕方
「現場が大好きで、何でも自分でやりたい」というのが押尾さんの本音。でも、そろそろ後輩を育てる立場になり、最近では人材育成に関する本を読むようになった。

優先順位のつけ方
お客様に関することを何より優先。それ以外は、期日を聞いて順に片づけていくだけで精一杯。

服装、化粧の仕方
対面販売ではないので動きやすさ重視。男性が多い職場なので、露出しすぎないよう気を付けている。化粧は、目指せマイナス3歳。

記憶に残る失敗談
出荷ミスで、お客様の店のオープン日に目玉商品のドレスの納品が間に合わなかったことがある。悪夢のような記憶。

※すべて雑誌掲載当時

(名取和久=撮影)
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